六丈記2

備忘録のようなもの

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産経の朴大統領名誉毀損事件<5>

 加藤ソウル前支局長が起訴されてから1ヶ月半以上経過し、ようやく初公判が開かれた。
*** 産経前ソウル支局長は無罪主張 名誉棄損で初公判 ***
テレ朝NEWS
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000039555.html
~略~
 初公判は27日午前に終わりました。ソウル中央地裁の3階にある傍聴席、30席余りの小さな法廷ですが、立ち見の傍聴者もあふれて、まるで満員電車のような状況でした。そして、開廷直後に傍聴していた保守団体のメンバー数人が「謝罪しろ」などと叫び始めて追い出されるなど、異様な雰囲気のなかで公判が進みました。初公判では、まず検察側が起訴状を朗読し、「噂(うわさ)の真偽を確認せず、大統領らを誹謗(ひぼう)する目的で、公然と嘘の事実を報じて大統領らの名誉を傷付けた」と指摘しました。一方、加藤前支局長は罪状認否で「大統領を誹謗する意図は全くありません。この裁判が法と証拠に基づき、厳正に行われることを望みます」などと述べ、改めて無罪を主張しました。裁判長は今後の争点について、加藤前支局長の記事が虚偽であったのかどうか、そして朴大統領を誹謗中傷する目的で書かれたのか、それとも公益性があったのかどうかについて審議を進めていくと話しました。次回の公判は来月15日になります。
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◆裁判の焦点
 裁判は次の3つを中心に進められそうである。
●記事が虚偽であったのかどうか
●朴大統領を誹謗中傷する目的で書かれたのか
●公益性があったのかどうか
 上の2つは検察が立証しなければならず、公益性については弁護側が立証することになる。

 「記事が虚偽」の虚偽とは、何を虚偽とみているのであろうか。検察は、「朴槿恵大統領がセウォル号事故発生当日、チョン・ユンフェとともにおり、チョン・ユンフェもしくはチェ・テミンと緊密な男女関係である」かのように書いたことが「虚偽の事実」に当たるとしているので、検察の言う「虚偽」とは朴大統領自身の行為(事故当日の行動や男女関係の存在)を対象としている。つまり、大統領の行為を間違って伝えているから虚偽であるということである。しかし、産経新聞の記事は直接大統領の行為を伝えるような書き方をしておらず、朴政権のレームダック化が進んでいる現象として「朴大統領をめぐる噂」があると書いている。だから、記事が虚偽と言うならば、大統領の行為を対象とするのではなく、噂を対象とすべきである。であるからして、記事が虚偽であるかどうかは、噂の存在の有無若しくは噂の内容の捏造があったのかどうかをもって判断されなければならない。朴大統領をめぐる噂は韓国の一般メディアも取り上げているのであるから、噂の存在自体を否定することは無理である。また、内容についても、朝鮮日報のコラムが噂を大統領の男女関係のことと暗示しているのであるから、噂の内容を加藤ソウル前支局長が捏造したとするのも困難であろう。
 そもそも、検察が情報通信網法第70条2項で起訴しなければ「虚偽」について立証する必要も無かった。名誉毀損を問うとしても、虚偽であるかどうかを問わない情報通信網法第70条1項であれば、検察の立証責任のハードルは低かった。第70条2項は第70条1項より量刑が倍以上重いが、有罪にし易いことを考慮すれば第70条1項を選択するという判断もあったと思う。それでも、検察が第70条2項を選択したのは、朴大統領に男女関係は無いということをアピールすることが目的だったからではないであろうか。大統領側から男女関係を否定するように要望が出されていたから、検察は大統領の行為を対象として虚偽を主張していると思える。

 加藤ソウル前支局長と同様、朴大統領の男性関係を書いたとして情報通信網法違反(名誉毀損)に問われたケースがあった。昨年6月、48歳の主婦がインターネットの掲示板に「死ぬ日は遠くない」と題する文章を載せ、「朴大統領はチェ・テミン牧師、彼の婿チョン・ユンフェ氏と不倫関係」と書き込んだところ、これが情報通信網法違反になるとして同容疑で起訴された。この主婦は「チョ・ウン牧師のインタビュー映像と政治家のインタビュー記事を見て事実と信じていた」と主張したが、判事は「この内容に対する客観的根拠資料を探した事実もなく、見たという記事も私生活に関する抽象的な風聞を伝えるものがほとんどであり、これを事実と信じたという主張は納得しがたい」と退け、「虚偽ということ知りながらも一般の人の関心が大きい朴大統領の私生活に関する内容をインターネット掲示板に載せた」として、公共の利益を認めず、表現の自由の限界を越えているとし、ソウル中央地裁は10月1日にこの主婦に対して懲役4月、執行猶予1年の判決を下したのである。
 情報通信網法の名誉毀損には免責条項はないが、名誉毀損罪には真実性と公益性があれば免責されるとあるので、それに準じた運用をしていることがうかがえるが、判決理由からすると、大統領の私生活に関する事柄については公益性を認めず、誹謗中傷する目的であったと認定されたようである。
 加藤ソウル前支局長のケースは、噂を紹介するという形で朴大統領の私生活に触れているので、この主婦のケースがそのまま当てはまる訳ではないが、この様な判決をみると、噂を利用して誹謗中傷したと認定され公益性も認められない可能性が高いのではないかと思える。


◆法の適用範囲
 そもそも今回の件で韓国の国内法を適用されるのは妥当なのであろうか。日本語で書かれ、日本国内向けに日本国内のサーバーから発信されたにもかかわらず、韓国の国内法を適用されるのは理不尽と思うのが一般的であろう。
 名誉毀損は公然性(多数または不特定のものが認識し得る状態)がなければ成立しない。加藤ソウル前支局長が記事を書いたのは韓国国内であっても、公開されたのは日本の国内であるから、犯罪が行われたとするにしても日本国内の犯罪とみるべきではないか。

 法律の及ぶ範囲は原則として国内に限られる。よって、海外で国内法に違反しても、国内法は適用されない。ただし、例外はある。例えば日本の場合は、内乱、外患誘致、通貨偽造、公文書偽造など刑法第2条にある罪は外国で犯しても国内法が適用される(国籍は問わない)。日本国民であったら、外国で犯したとしても殺人、放火、誘拐、私文書偽造、名誉毀損など刑法第3条にある罪を犯せば、国内法で裁かれる場合がある。また、日本国民に対して刑法第3条の2の犯罪が犯されれば、外国人が外国で犯しても国内法が適用される。
*** 日本の刑法 ***
第一編 総則
第一章 通則
(国内犯)
第一条  この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2  日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
(国民以外の者の国外犯)
第三条の二  この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。
一  第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)及び第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)の罪
二  第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
三  第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
四  第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
五  第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
六  第二百三十六条(強盗)及び第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)の罪並びにこれらの罪の未遂罪
(他の法令の罪に対する適用)
第八条  この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
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 韓国の場合はどうであろうか。
*** 韓国の刑法 ***
第1編 総則
第1章 刑法の適用範囲
第2条(国内犯) 本法は、大韓民国領域内において罪を犯した内国人及び外国人に適用する。
第5条(外国人の国外犯) 本法は、大韓民国領域外において次に記載した罪を犯した外国人に適用する。
 1.内乱の罪
 2.外患の罪
 3.国旗に関する罪
 4.通貨に関する罪
 5.有価証券、切手及び印紙に関する罪
 6.文書に関する罪のうち第225条から第230条まで
 7.印章に関する罪のうち第238条
第6条(大韓民国及び大韓民国国民に対する国外犯) 本法は、大韓民国領域外において大韓民国又は大韓民国国民に対して前条に記載した以外の罪を犯した外国人に適用する。ただし、行為時の法律により犯罪を構成せず、又は訴追又は刑の執行を免除する場合には、この限りでない。
第8条(総則の適用) 本法総則は、他法令に定めた罪に適用する。ただし、その法令に特別の規定があるとときは、この限りでない。
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 外国における自国民に対する犯罪の適用範囲は、日本が「強姦」「殺人」「傷害」「逮捕監禁」「誘拐」「強盗」などの犯罪に限っているのに対し、韓国は刑法第6条で第5条以外の犯罪にも及ぶとしている。つまり、全ての種類の刑法犯に適用されるのである。要するに、韓国及び韓国民に対する犯罪は、世界の何処で犯されたとしても外国人であれば韓国の国内法が適用可能なのである。
 刑法はこの様であるが、情報通信網法には適用範囲が外国にも及ぶとも及ばないとも書いていない。しかし、刑法第8条には、定めが無い限り他法令の罪にも適用されるとあるので、韓国または韓国民に対するものであれば、情報通信網法が適用することが出来、罪に問えるのである。
 まさか、情報通信網法が外国で発生した事件にも適用可能な法システムになっているとは思ってもいなかった。だから、名誉毀損が発生したとされる場所は日本なのか韓国なのかと考えたところで、韓国の法的には意味がなかったのである。驚くべきことであるが。とは言え、韓国に司法管轄権(国内裁判所が、国内法令を適用して、事件を審理する権限)があると主張しても、外国には執行管轄権(行政が逮捕などにより、国内法令を執行する権限)が及ばないため、外国にいる犯人を韓国が直接拘束することは出来ない。ただ、韓国に入国するとその限りではない。

 調べてみると、日本国内で発生した事案について韓国司法が司法管轄権を行使した実例が既にあった。維新政党・新風代表の鈴木信行氏のケースがそうである。
 鈴木新風代表は2012年6月にソウルの駐韓日本大使館前にある慰安婦像に「竹島は日本固有の領土」と書かれた杭を縛りつけたとされる人物である。鈴木新風代表は日本でも同様のことをしていたとされていて、2012年9月に金沢市にある尹奉吉義士殉国記念碑の前にも同じ内容の杭を立てて自分のブログに掲載している。
 これらの件について、ソウル中央地検は日本にいる鈴木新風代表に対して出頭命令を日本政府を通さずに直接出していたが、鈴木新風代表が応じなかったため、一度も取り調べることなく2013年2月に慰安婦像の件については名誉毀損罪を、記念碑の件については死者名誉毀損罪を適用し、起訴した。裁判は、鈴木新風代表が出廷しないために初公判後は延期となっているが、指名手配となっているらしい。
 また、鈴木新風代表は、尹奉吉の遺族にも死者の名誉を毀損したとして賠償を求める民事訴訟を起こされ、欠席裁判で杭を立てた本人と認定されて敗訴している。これからすると、刑事ばかりでなく民事でも国境を越えて司法管轄権を行使できる法システムになっているようである。

 最近の日本では、韓国社会の欺瞞性が広く知れ渡るようになり、韓国を嫌う人々が非常に増えているが、韓国の司法制度が韓国及び韓国人に関する場合は国外の事件にも裁判権を行使できるシステムになっていることを知る人はほとんどいないのではないか。今回の名誉毀損事件の報道の中でもこのことについて言及した記事は無かったのではないか。こうしたことこそ広く知られるべきであると思う。


◆名誉毀損をした者
 起訴状によると、加藤ソウル前支局長は8月2日ごろにソウル支局で記事を作成し、東京の本社に送信、8月3日正午に産経新聞インターネット記事欄に掲載されたとなっている。加藤ソウル前支局長を聴取した結果であろうから、事実であろう。
 新聞の場合、記者の書いた原稿は各部デスクがチェックし、編集局が校閲と調整を行った後、紙面に掲載される。つまり、出稿したからといって、必ず掲載される訳ではなく、何段階かの検討を経て掲載されるのである。個人のブログではないのであるから、インターネット版であってもノーチェックで掲載されることは無いはずである。加藤ソウル前支局長が書いた記事も、出稿から掲載までの間にチェックがあったと思われ、掲載の判断も本社の編集局で行われたのであろう。そうでなければ、とんでもない記事が掲載されかねない。

 名誉毀損罪は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立する。公然とは「不特定または多数の者」に対して行うことを意味する。どんな罵詈雑言を書いたとしても公表しなければ成立しないのである。それは韓国の情報通信網法でも同様である。
 加藤ソウル前支局長が書いた原稿が仮に名誉を毀損していたとしても、加藤ソウル前支局長が公表した訳ではない。掲載するかの判断をし、公表する作業をしたのは編集局のはずである。であるならば、加藤ソウル前支局長は名誉毀損の構成要件を満たしていないので、罪に問われるのはおかしいと言わざる得ない。
 加藤ソウル前支局長や編集局員も新聞社の業務の一環として行ったのであるから、責任を問うとしたら新聞社に対して行うのが筋であろう。だが、ソウル中央地検は加藤ソウル前支局長だけを起訴することに止め、産経新聞社に対しては何のアクションも起こしていない。起訴するなら、責任者である産経新聞の社長や編集局長に対して行うべきである。加藤ソウル前支局長の個人犯罪ではないのであるから。


・・・終わり。
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朴大統領をネット上で誹謗した主婦 懲役4月・執行猶予1年
http://japanese.joins.com/article/806/190806.html
■海外で国内法に違反する行為をした場合に国内法を適用できるのか?
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column061.htm
刑法1
http://www.geocities.jp/koreanlaws/keihou1.html#第1章 刑法の適用範囲
くい設置の日本人 韓国検察が起訴=名誉毀損の罪で
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2013/02/17/0200000000AJP20130217000800882.HTML
韓国“反日”検察の異常 「慰安婦」像に杭→日本人を名誉毀損で起訴
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130224/kor13022407010001-n1.htm
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