六丈記2

備忘録のようなもの

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中国の防空識別圏について1

 昨年の12月13日、中国国家海洋局所属の小型プロペラ機「Y12」1機が尖閣諸島の魚釣島付近の領空に侵入した。中国による領空侵犯は初めてだった。
 年々、中国機による東シナ海の日本の防空識別圏への侵入が増え、スクランブル出動した回数は、平成23年度が156回、平成24年度が306回だった。今年度に入っても侵入は止まらず、9月までに149回のスクランブル出動を数えている。中国が、海からの圧力に加え、空からも圧力を掛けようとしているのは明らかである。中国はその様な方針を更に押し進め、尖閣諸島を含む東シナ海の大部分に防空識別圏を設定した。
 この中国の防空識別圏設定に日本の世論は沸き立ち、非難一色に染まったが、ネットの掲示板の反応などを見ていると、中には誤認をしていると思われる書き込みも少なからず見受けられた。なので、少し冷静に考えてみようと思う。
 
 
◆領空と飛行の自由
 領空は領土と領海(領土から12海里、22.2キロメートルの範囲まで)の上方空間のことであり、一般的に大気圏まで(100km位まで)とされているが、明確な取り決めは無い。領空は、領土と領海と同じく国家の主権(領域主権)に属し、領海に認められているような無害通航権は基本的に認められていない。よって、外国機が当該国の許可なしに領空を通過したり着陸することは、領空侵犯となり、国際法上の不法行為となる。
 どの国の領空でも無い空域は「公空」と呼ばれ、公海や無主地の上空がそれに当たる。領空は無許可飛行が認められていないが、公空には飛行の自由が国際的に認められている。
 国連海洋法条約には、排他的経済水域や公海の上空についての飛行の自由が明記されている。国連海洋法条約の締約国は162の国・地域(批准140、加入15、承継6、正式確認1)に及び、 日本、中国韓国などが批准しているが、アメリカ台湾は署名していない。
 日本、中国韓国はこの条約を批准しているのだから、東シナ海の領海以外の大部分について飛行の自由を尊重しなければならない立場である。
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海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)
第五十八条 排他的経済水域における他の国の権利及び義務
1 すべての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第八十七条に定める航行及び上空飛行の自由並びに海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由並びにこれらの自由に関連し及びこの条約のその他の規定と両立するその他の国際的に適法な海洋の利用(船舶及び航空機の運航並びに海底電線及び海底パイプラインの運用に係る海洋の利用等)の自由を享有する。
2 第八十八条から第百十五条までの規定及び国際法の他の関連する規則は、この部の規定に反しない限り、排他的経済水域について適用する。
3 いずれの国も、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この部の規定に反しない限り、この条約及び国際法の他の規則に従って沿岸国が制定する法令を遵守する。
第八十七条 公海の自由
1 公海は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、すべての国に開放される。公海の自由は、この条約及び国際法の他の規則に定める条件に従って行使される。この公海の自由には、沿岸国及び内陸国のいずれについても、特に次のものが含まれる。
(a) 航行の自由
(b) 上空飛行の自由
(c) 海底電線及び海底パイプラインを敷設する自由。ただし、第六部の規定の適用が妨げられるものではない。
(d) 国際法によって認められる人工島その他の施設を建設する自由。ただし、第六部の規定の適用が妨げられるものではない。
(e) 第二節に定める条件に従って漁獲を行う自由
(f) 科学的調査を行う自由。ただし、第六部及び第十三部の規定の適用が妨げられるものではない。
2 1に規定する自由は、すべての国により、公海の自由を行使する他の国の利益及び深海底における活動に関するこの条約に基づく権利に妥当な考慮を払って行使されなければならない。
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◆防空識別圏
 防空識別圏(ADIZ)は、領空に接近する航空機を識別するために、領空の外側に設けた空域のことである。各国が国内法などで独自に設定しているものであり、国際法で認められた権利ではない。日本では、「防空識別圏における飛行要領に関する訓令(防衛庁訓令第36号)」で防空識別圏の範囲を定めている。だから、防衛大臣の承認で防空識別圏の変更は可能である。
 防空識別圏を設ける目的は、領空に侵入されてから対応していたのでは領土上空に到達される可能性が高いため、領空の外側に航空機を識別するための空域を設け、領空に侵入される前に対象航空機の危険性を見極め、領空侵犯されたら直ぐに対処できるようにすることである。だから、未確認飛行物体が防空識別圏に侵入すると、戦闘機によるスクランブル出動がなされたりする。
 
 各国が防空識別圏を設定しているが、国土防衛のために、各国が勝手に領空外に制定しているだけなので、他国に対して排他的権利を主張できるものではない。だから、他国の防空識別圏に侵入したとしても他国の権利を侵害するものではないし、他国の要請に従う義務も生じない。防空識別圏に侵入されたとしても、退去するように要請するか、領空侵犯をしないように警告するくらいしか出来ないのである。ロシアは頻繁に日本の防空識別圏に侵入してくるため、その都度自衛隊機がスクランブル対応しているが、ロシア軍機は警告に従うことはない。
 防空識別圏は各国が勝手に制定しているものなので、他国の領空内に設定してもかまわない。実際にそういう例もある。台湾の防空識別圏は、最西端の島である与那国島の上空に設定(島の西側2/3)している。だから、中国がどこに防空識別圏を設定しても、咎めるだてすることは出来ない。たとえ、東京上空に防空識別圏を設定したとしても中国の勝手である。ただ、防空識別圏はスクランブル出動の基準でもあるため、常時レーダーなどで監視し、未確認飛行物体の侵入に備えてスクランブル体制を整わせていなければ国防上の意味が無い。だから、防空識別圏の設定には能力と合理性が肝要なのである。
 
 ちなみに、日本の領空侵犯機に対する措置は自衛隊法で定められており、対応手順は以下の通り。
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自衛隊法第84条第1項(領空侵犯に対する措置)
防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。
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●レーダーが防空識別圏内に航空機を探知

●飛行計画と照合

●航空機に対し、航空無線機で領空に接近していることを通告

●退去の意思がみられない場合は、戦闘機2機がスクランブル発進

●戦闘機が航空機を目視確認

●戦闘機からの無線で領空に接近していること伝え、針路変更を要請

<領空侵犯>

●無線で領空侵犯を伝え、退去するようにと警告

●戦闘機1機が航空機の前方で翼を振り、着陸誘導する

●航空機の前方で警告射撃
 過去の例ではここまで。領空侵犯事例は30回以上あるが、警告射撃を行ったのはソ連の偵察機が沖縄本島上空を通過した時の1回のみ。強制着陸の事例は無い。
 自衛隊法第84条には、攻撃について明確な記述はないため、正当防衛以外で撃墜可能かは微妙である。ただ、警告無視の無人機に対しては、10月に安倍首相が撃墜を含めた強制措置を了承している。
※民間機への攻撃は国際民間航空条約で原則的に禁止となっている。
 
 
・・・続く。
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国連海洋法条約
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19821210.T1J.html
防空識別圏における飛行要領に関する訓令
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1969/ax19690829_00036_000.pdf
与那国空港
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8E%E9%82%A3%E5%9B%BD%E7%A9%BA%E6%B8%AF#.E9.98.B2.E7.A9.BA.E8.AD.98.E5.88.A5.E5.9C.8F.E5.95.8F.E9.A1.8C
領空侵犯
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%98%E7%A9%BA%E4%BE%B5%E7%8A%AF
 

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