六丈記2

備忘録のようなもの

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生野区連続通り魔事件 犯人が不起訴になる1

 11月14日、生野区連続通り魔事件の犯人の在日韓国人を、大阪地検は心神喪失により刑事責任能力は認められないとして不起訴処分とし、大阪地裁は心神喪失者等医療観察法に基づく地検の申し立てを受け、男に鑑定入院を命じたとのことだ。
 まず、事件を振り返る。
 
◆犯人
本名:康桂善(カン ケソン)
通名:田仲桂善(たなか かつよし)
年齢:事件当時31歳
住所:大阪市生野区新今里
国籍:韓国(在日)
病歴:約3年前から精神疾患(統合失調症?)で入退院を繰り返す
 
 
◆事件概要
事件名 :生野区連続通り魔事件
容疑罪名:殺人未遂、銃刀法違反
犯行場所:大阪市生野区
犯行時間:2013年5月22日早朝
凶器  :刃渡り12cmの果物ナイフ
被害者 :毎日新聞配達員・川口修一さん(61歳)、ビル清掃員・越智美智子さん(63歳)
被害  :被害者2人が刺創を負い、重傷
 
 
◆犯行経過
●午前5時15分頃、朝刊を配っていた新聞配達員の川口さんが康の自宅マンションに入る。
●1階の階段付近で犯行機会をうかがっていた康が、川口さんと一緒にエレベーターに乗り込み、無言で川口さんの腹や顔などを刺した。
●川口さんは6階で降り、階段を駆け下りて逃げ出し、午前5時18分に「男に刺された」と110番通報。
●康は川口さんを追って屋外に出た。ナイフをスーパーのナイロン袋に包み、近くの商店街に徒歩で移動。
●康は通行人に片端から「日本人か」と声を掛けて回る。
●一人の男性が康の問いに「そうやで」と答えると、康がナイフを取り出したため、男性はオートロックの自宅マンション内に逃げ込み、無事に済んだ。
●別の高齢男性は康の問いに否定の答えを返すと、康は「日本人だったら誰でもやったるんや」と叫び、新たな標的探しに移った。
●午前5時24分、清掃員の越智さんに康が「生粋の日本人か」と質問。越智さんが「そうです」と答えると、康は越智さんを羽交い絞めにし、腹や背中などを刺した。
●越智さんは「助けて」と叫びながら抵抗し、康を振り切るもその場に倒れ込んだ。
●通報で駆け付けた警察官が康を取り押さえ、現行犯逮捕。
●逮捕時、「仲間はおるんか」との警察官の問いに、康は「知るか」と激高。
 
 
◆逮捕後の経過
●5月22日、越智さんに対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕。康は大阪府警の取調べに「生粋の日本人なら何人も殺そうと思った」と供述。
●取調べで、康は「透明人間が自分の中に入ってきた」などと意味不明の供述を繰り返すも、弁護人の選定にあたっては「日本人は嫌だ」などと主張。
●6月12日、大阪府警捜査1課は川口さんに対する殺人未遂容疑で、康を再逮捕。康は黙秘していると伝えられる。
●6月12日、大阪地検は越智さんに対する殺人未遂容疑について処分保留とした。
●大阪地検は、康の責任能力の判定のため、大阪地裁に鑑定留置を申請、受理される。期間は6月21日~11月6日。
●11月14日、大阪地検は心神喪失を理由に康の不起訴処分を決定。大阪地検の申し立てにより、大阪地裁が康に鑑定入院を命じる。
 
 
◆鑑定留置と鑑定入院
 鑑定留置は、刑事訴訟法第167条に基づいた措置で、逮捕された容疑者や起訴された被告の精神状態などを調べるために病院などで身柄を拘束することを意味する。鑑定の結果は捜査段階や公判で、責任能力の有無や程度を判断する参考となる。
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刑事訴訟法第167条
1.被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。
2.前項の留置は、鑑定留置状を発してこれをしなければならない。
3.第1項の留置につき必要があるときは、裁判所は、被告人を収容すべき病院その他の場所の管理者の申出により、又は職権で、司法警察職員に被告人の看守を命ずることができる。
4.裁判所は、必要があるときは、留置の期間を延長し又は短縮することができる。
5.勾留に関する規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、第1項の留置についてこれを準用する。但し、保釈に関する規定は、この限りでない。
6.第1項の留置は、未決勾留日数の算入については、これを勾留とみなす。
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 鑑定入院命令は心神喪失者等医療観察法34条に基づいた命令である。鑑定または医療的観察ために対象者を一定期間鑑定入院医療機関に入院させ、入院させるか、通院させるか、特別な処遇はしないかを裁判官が最終的に判断する。鑑定入院期間は、原則として当該命令執行日から2ヶ月以内であるが、1ヶ月以内の延長が認められているので、最長は3ヶ月となる。
 対象者の鑑定については、明らかに必要ないと認められる場合以外、心神喪失者等医療観察法37条により、鑑定医が決定される。鑑定医は鑑定入院先の医師であるとは限らない。
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心神喪失者等医療観察法34条
1.前条第1項の申立てを受けた地方裁判所の裁判官は、対象者について、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除き、鑑定その他医療的観察のため、当該対象者を入院させ第40条第1項又は第42条の決定があるまでの間在院させる旨を命じなければならない。この場合において、裁判官は、呼出し及び同行に関し、裁判所と同一の権限を有する。
2.前項の命令を発するには、裁判官は、当該対象者に対し、あらかじめ、供述を強いられることはないこと及び弁護士である付添人を選任することができることを説明した上、当該対象者が第2条第3項に該当するとされる理由の要旨及び前条第1項の申立てがあったことを告げ、陳述する機会を与えなければならない。ただし、当該対象者の心身の障害により又は正当な理由がなく裁判官の面前に出頭しないため、これらを行うことができないときは、この限りでない。
3.第1項の命令による入院の期間は、当該命令が執行された日から起算して二月を超えることができない。ただし、裁判所は、必要があると認めるときは、通じて一月を超えない範囲で、決定をもって、この期間を延長することができる。
4.裁判官は、検察官に第1項の命令の執行を嘱託するものとする。
5.第28条第2項、第3項及び第6項並びに第29条第3項の規定は、前項の命令の執行について準用する。
6.第1項の命令は、判事補が一人で発することができる。
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心神喪失者等医療観察法37条
1.裁判所は、対象者に関し、精神障害者であるか否か及び対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要があるか否かについて、精神保健判定医又はこれと同等以上の学識経験を有すると認める医師に鑑定を命じなければならない。ただし、当該必要が明らかにないと認める場合は、この限りでない。
2.前項の鑑定を行うに当たっては、精神障害の類型、過去の病歴、現在及び対象行為を行った当時の病状、治療状況、病状及び治療状況から予測される将来の症状、対象行為の内容、過去の他害行為の有無及び内容並びに当該対象者の性格を考慮するものとする。
3.第1項の規定により鑑定を命ぜられた医師は、当該鑑定の結果に、当該対象者の病状に基づき、この法律による入院による医療の必要性に関する意見を付さなければならない。
4.裁判所は、第1項の鑑定を命じた医師に対し、当該鑑定の実施に当たって留意すべき事項を示すことができる。
5.裁判所は、第34条第1項前段の命令が発せられていない対象者について第1項の鑑定を命ずる場合において、必要があると認めるときは、決定をもって、鑑定その他医療的観察のため、当該対象者を入院させ第40条第1項又は第42条の決定があるまでの間在院させる旨を命ずることができる。第34条第2項から第5項までの規定は、この場合について準用する。
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◆医療観察制度
 心神喪失によって刑事責任が問えない犯罪者に対する対応が、以前と変わっている。附属池田小事件(2001年6月)を起こした宅間守に2度の措置入院歴があったことを切っ掛けに、2003年に心神喪失者等医療観察法が制定され、医療観察制度がスタートしていたようだ。
 法務省の説明ではこうなっている。
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医療観察制度とは
「医療観察制度」は,心神喪失又は心神耗弱の状態で(精神の障害のために善悪の区別がつかないなど,通常の刑事責任を問えない状態のことをいいます。)殺人,放火等の重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進することを目的として新たに創設された処遇制度です。
 平成15年に成立した「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」に基づき,適切な処遇を決定するための審判手続が設けられたほか,入院決定(医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定)を受けた人については,厚生労働省所管の指定入院医療機関による専門的な医療が提供され,その間,保護観察所は,その人について,退院後の生活環境の調整を行います。
 また,通院決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた人及び退院を許可された人については,原則として3年間,厚生労働省所管の指定通院医療機関による医療が提供されるほか,保護観察所による精神保健観察に付され,必要な医療と援助の確保が図られます。
 

 

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◆今後の流れ
 大阪地検は鑑定留置期間に犯人の康の起訴前鑑定を行っている。だが、どの様な精神鑑定(嘱託鑑定または簡易鑑定)を何回行い、どの様な鑑定結果が出たのか示されていない。しかし、心神喪失を理由に不起訴処分を決定しているのだから、少なくとも1度は「心神喪失」という鑑定結果が出されたのだろう。
 不起訴になったことで、犯人の康は鑑定入院させられているが、今後、鑑定医による鑑定がなされ、「取下げ」が無ければ、裁判官と精神保健審判員(精神科医)それぞれ1名からなる合議体による審判で、2ヶ月以内(延長があれば3ヶ月以内)に処遇の決定が下される予定だ。下される決定は「入院決定」、「通院決定」、「医療を行わない旨の決定」、「却下決定」の内のどれかになる。決定に対して抗告がなければ確定だ。
●入院決定の場合
 指定入院医療機関に入院させられる。6ヶ月ごとに入院継続の決定が地裁によりなされ、標準入院期間は18ヶ月。地裁の退院許可決定が下されると退院になるが、同時に「通院決定」か「医療を終了する旨の決定」が下される。「通院決定」の場合は指定入院医療機関に通院(下記の通院決定の場合に移行)させられる。「医療を終了する旨の決定」の場合は、医療観察制度による処遇が終わる。
●通院決定の場合
 保護観察所の社会復帰調整官による観察・指導等を受け、指定通院医療機関で通院医療がなされる。通院医療期間は原則3年間だが、裁判所の決定により最長2年の延長が可能。入院の必要があるとされた場合は、裁判所の決定により入院させられることもある。
 通院医療期間満了や、通院医療期間内であっても裁判所が「医療を終了する旨の決定」をした場合は、医療観察制度による処遇が終わる。
●医療を行わない旨の決定の場合
 薬物などによる一時的な心神喪失などの場合にこの決定が下されるのであろうか。この決定が下された後、どの様な経過を辿ることのなるのかはよく分からない。ただ、最高裁が下記のように判示していることから推測すると、医療観察制度による処遇が終わり、事実上、精神保健福祉法の措置(措置入院)がなされるのではないか。
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平成19年7月25日最高裁判所第二小法廷決定
「医療観察法の目的,その制定経緯等に照らせば,同法は,同法2条3項所定の対象者で医療の必要があるもののうち,対象行為を行った際の精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰できるようにすることが必要な者を同法による医療の対象とする趣旨であって,同法33条1項の申立てがあった場合に,裁判所は,上記必要が認められる者については,同法42条1項1号の医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定,又は同項2号の入院によらない医療を受けさせる旨の決定をしなければならず,上記必要を認めながら,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による措置入院等の医療で足りるとして医療観察法42条1項3号の同法による医療を行わない旨の決定をすることは許されない」
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●却下決定の場合
 却下理由には「対象行為を行ったとは認められない」、「心神喪失者等ではない」、「申立て不適法」がある。
 「申立て不適法」は、検察の申立てが法律の規定に合わないということであろうから、第33条第1項の「社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除き」の部分などに抵触した場合であろうか。例えば、重度の痴呆症で直る見込みが無いとか。康には適用されないと思う。
 「対象行為を行ったとは認められない」は、第2条第2項の各号に掲げられている行為、つまり、放火、強制わいせつ、殺人、傷害、強盗など(未遂も含む)を犯していないと判断された場合だ。康が犯した犯罪は、殺人未遂であることは明白(少なくとも傷害は確実)だから、この理由による却下は無い。
 「心神喪失者等ではない」との理由で却下決定されるということは、心神喪失として不起訴にした検察の判断が間違っていたということを意味する。検察は不起訴を覆し、刑事裁判が行われることになるだろう。
 
 
◆康が刑事裁判にかけられる可能性
 心神喪失者等ではないとの理由で却下決定が下され、刑事裁判になった例は以下のようにある。
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一転、責任能力認め起訴 心神喪失で不起訴の男
http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008092201000939.html
 母親を包丁で刺したなどとして逮捕され、心神喪失を理由に不起訴となった無職の男(41)が、心神喪失者医療観察法に基づく東京地裁の審判で完全責任能力を認められ、一転、殺人罪などで起訴されたことが22日、分かった。
 計3回実施された鑑定では、いずれも異なる結論が出ており、事件をめぐる精神鑑定の難しさをあらためて示した。
 男は昨年12月、東京都内の自宅で就寝中の母親=当時(71)=と兄を包丁で切りつけたとして、殺人未遂の現行犯で警視庁に逮捕された。母親はその後死亡した。
 東京地検は鑑定留置して本格的な精神鑑定を実施。「統合失調症に近い精神障害で、責任能力が著しく減退した心神耗弱状態」と判断された。あらためて実施した簡易鑑定では「心神喪失状態」との結果が出たため、今年5月に男を不起訴とし東京地裁に審判を申し立てた。
 ところが審判中の鑑定では「完全責任能力がある」と判断され、地裁が申し立てを却下。地検は7月、男を起訴した。
2008/09/22 21:13   【共同通信】
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不起訴の女を一転起訴 医療観察「責任能力ある」
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111001000291.html
 自宅に火を付けた疑いで逮捕されたが、精神鑑定で責任能力に問題があるとして不起訴処分となった東京都杉並区、無職青木圭子容疑者(38)について、東京地検が一転して現住建造物等放火罪で起訴していたことが10日、分かった。
 いったん不起訴とした地検が、心神喪失者医療観察法に基づき、青木被告の治療内容などを決めるよう東京地裁に申し立てたところ、審判であらためて精神鑑定が行われ、「完全責任能力がある」と認定、治療を求める申し立てが却下された。今後、裁判員裁判で審理される。
 却下と起訴はいずれも9日付。
 起訴状によると、青木被告は5月1日正午ごろ、友人の日野詠子被告(36)=同罪で起訴=と共謀し、自宅2階部屋に火を付けて計約21平方メートルを焼いた、としている。
2009/11/10 11:35   【共同通信】
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 この様な実例があるから、犯人の康が不起訴処分になって鑑定入院したといっても、起訴される可能性は残されている。では、却下決定が下される割合はどの程度なのだろうか。平成25年版犯罪白書に「平成24年における検察官申立人員及び審判の終局処理人員」という表があるので、貼り付ける。
 
●入院決定-----------------66.8%
●通院決定-----------------10.1%
●医療を行わない旨の決定----------19.2%
●却下(対象行為を行ったとは認められない)-0%
●却下(心神喪失者等ではない)-------2.9%
●取り下げ-----------------0.5%
●申立て不適法---------------0.5%
 分母の総数には判決確定後の分も含まれているはずだから、不起訴処分で地裁の審判手続に持ち込まれて出された決定結果の割合は若干上がるだろう。それでも、不起訴処分がも覆されて、刑事裁判になる可能性は数%というのが現状のようだ。だからといって、犯人の康が、刑事責任を問われる可能性がそうということではないが。
 
<生野区連続通り魔事件 犯人が不起訴になる2>に続く・・・
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大阪・生野の通り魔事件 韓国籍の男、心神喪失で不起訴
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/131115/evt13111509470007-n1.html
「日本人殺そうと…」凶行の一部始終 大阪・生野、韓国籍の包丁巨漢が大暴れ
http://www.j-cast.com/2013/05/23175764.html?p=all
襲撃前「生粋の日本人か」と確認 別の通行人も標的に
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130523/crm13052314310011-n1.htm
別の殺人未遂容疑で再逮捕=2人刺傷事件-大阪府警
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201306/2013061200697
「日本人なら何人も殺そうと思った」 逮捕の男が供述 府警が捜査本部設置
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130522/waf13052212050018-n1.htm
突然の凶行に凍り付いた早朝 刃物男、男性を執拗に追う
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130522/waf13052211550016-n1.htm
「日本人の弁護人イヤ」殺人未遂容疑で韓国籍の無職男を再逮捕 大阪・生野の通り魔事件
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130612/waf13061216410028-n1.htm
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO110.html
医療観察制度とは
http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo11.html
平成25年版犯罪白書
http://www.moj.go.jp/content/000115818.pdf

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