六丈記2

備忘録のようなもの

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ウトナイ湖近くにドイツ皇帝と談義を交わした男が住んでいた

 

 


 

 

 

 

 

 

 「小さな川の流れが集まるところ」という意味のアイヌ語に由来するウトナイ湖は、苫小牧市の東部に位置し、周囲約9km、面積275ヘクタール、水深1.2m(平均水深0.6m)の淡水湖です。浅く小さな湖ですが、鳥類の宝庫(260種以上が確認されている)で、白鳥やカモなどの渡り鳥の中継地、越冬地としても有名です。
 ウトナイ湖とその周辺は、1982年に国指定鳥獣保護区特別保護地区に定められ、1991年にはラムサール条約特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)の登録湿地に指定(日本で4番目)されています。
 
 かつては温泉などがあり、湖畔の行楽地でしたが、近年は野鳥保護に目が向けられ、環境省のウトナイ湖野生鳥獣保護センターなどが設置されています。
 
 

 このウトナイ湖野生鳥獣保護センターの片隅に折居彪二郎コーナーなるものがあります。書籍などの資料が棚に並べられているのですが、折居彪二郎(おりい ひょうじろう)という名前を聞いたことがありません。折居彪二郎氏とはどの様な人物なのでしょうか。
 
 折居氏は明治から昭和初期にかけて活躍した世界的な鳥獣採集家で、卓越した射撃と剥製製作の腕を持ち、製作した標本は数万点に及ぶと言われているそうです。標本は大英博物館にも納められ、ドイツ皇帝ウィルヘルム2世と二人きりで狩猟談義をするほどだったとのことです。世界の鳥獣研究に大きな足跡を残し、鳥学の世界では「東洋のオリイ」と称えられていたとか。
 
※鳥獣採集家とは、研究者の依頼により調査地に赴いて鳥獣を捕獲し、標本を制作して研究者に送ることを生業としている職業人。
 
 1906年、折居氏は23歳の時に大英博物館嘱託採集員マルコム・アンダーソンの助手を勤めました。これが鳥獣採集家になる切っ掛けでした。以後、国内外の研究者(アラン・オーストン、黒田長礼、山階芳麿など)の依頼を受けて鳥獣を採集し、その活動は日本本土に限らず、千島、樺太、韓国中国、満州、台湾、南洋諸島にまで及んでいます。
 1913年に苫小牧の植苗地区(ウトナイ湖近くの美々川の畔)に移り住み、以後この地に住み続け、87歳で亡くなりました。
 
◆折居彪二郎年表
1883年:新潟県北蒲原郡笹岡村に生まれる
1899年:函館に移り住む
1904年:日露戦争
1906年:朝鮮に渡り採集
1908年:中国山東省、千島に渡り採集
1909年:満州興安領、樺太に渡り採集
1911年:中国雲南省で採集(鳥類1700点、哺乳類400点)
1913年:函館市より苫小牧村字植苗に移り住む
1914年:第一次世界大戦
1922年:琉球大東列島で採集(鳥類1621点、哺乳類600点)
1923年:関東大震災
1926年:樺太シベリアで採集(鳥類1200点、哺乳類230点)
1928年:北千島で採集(鳥類708点、哺乳類200点)
1929年:朝鮮で採集(鳥類1942点、哺乳類200点)
1930年:ミクロネシアで採集(鳥類3000点、哺乳類1000点)
1932年:満州、台湾で採集(鳥類1500点、哺乳類300点)
1936年:大東列島で採集
1941年:太平洋戦争
1944年:厚岸、根室で採集
1948年:日本鳥学会より、その不朽の功績が表彰される
1948年:苫小牧付近で採集
1958年:大日本猟友会創立20周年記念で感謝状を受ける
1970年:老衰で死去。享年87歳。
 
 折居氏は、鳥類や哺乳類の新種16種と新亜種84種を発見しています。そのため、オリイモズ(学名Lanius isabellinus)、オリイヤマガラ(学名Parus varius olivaceus)、オリイオオコウモリ(学名Pteropus dasymallus inopinatus)など和名に「オリイ」と付く鳥獣は幾つかあり、学名にも「Orii」と付けられたものは鳥類で10種、哺乳類で7種あります。
●オオアカハラ        学名Turdus chrysolaus orii
●ダイトウミソサザイ     学名Troglodytes troglodytes orii
●ダイトウヤマガラ      学名Parus varius orii
●オリイコゲラ        学名Dendrocopos kizuki orii
●ヤクシマカケス       学名Garrulus glandarius orii
●オリイコキクガシラコウモリ 学名Rhinolophus cornutus orii
●オリイジネズミ       学名Crocidura orii
・・・等など
 馴染みの薄い鳥獣ばかりです。ですが、人気のある意外な動物が折居氏と関わっていました。学名「Pteromys volans orii」、エゾモモンガのことです。エゾモモンガについて正式報告された初めての記録が折居氏によるものだったことから、動物学者の黒田長礼博士が折居氏の名を取って学名にしたとのことです。
 
 

 来月、折居氏の採集日誌や論文などをまとめた全集「鳥獣採集家折居彪二郎採集日誌〜鳥学を支えた男」が発刊されます。B5判、約500ページで、予定価格5250円。300部発行ですから、関係者以外が手にすることはないでしょうが、これを機に地方に埋もれていた偉人にスポットライトが当たればいいですね。

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ウトナイ湖野生鳥獣保護センター
http://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kankyo-seikatu/utonaikohp/pamphlet.pdf
鳥学を支えた男 折居彪二郎
http://axis053.com/orii_pr/index.html
北海道大学農学部博物館資料目録第1号
http://www.hokudai.ac.jp/fsc/bg/muse/pdfs/cat01.pdf
山階芳麿 私の履歴書
http://www.yamashina.or.jp/hp/yomimono/rirekisho/rirekisho11.html
東洋のオリイ 9月に全集発刊
http://www.tomamin.co.jp/2013t/t13050802.html

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