六丈記2

備忘録のようなもの

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北方領土問題に対する独創的アプローチを考える

 2月21日の森喜朗元首相とプーチン大統領の会談で、森元首相は北方領土問題についてイルクーツク声明の重要性を確認し、プーチン大統領はエネルギー分野や極東の農業分野での協力関係を訴えると共に、北朝鮮問題で両国の協力の必要性を強調したとのこと。また、プーチン大統領は昨年の「引き分け」発言の意味について「双方が受け入れ可能な解決策のことだ」と説明し、北方領土問題について「日露間に平和条約がないのは異常な事態だ」と解決に前向きな姿勢を見せつつも、「なかなか難しい問題だ」との認識を示したらしい。
 
 プーチン大統領は周辺諸国との国境画定を重視している。中国カザフスタンアゼルバイジャンウクライナ北朝鮮、ノルウェーなどと国境を画定し、バルト諸国ともほぼ合意している。国境を画定させることで周辺国との係争を減らし、社会の不安定要因を取り除くと共に、権利を確定させたい意図があるのだろう。だから、日本との国境画定にも意欲はあるのかもしれない。
 特に、日本との関係改善が進めば、極東のエネルギー資源の販売先になるし、中国の国力増大による潜在的圧力を和らげる効果もある。極東での農業協力をプーチン大統領が訴えたのは中国人に対する警戒感の現われだろう。
 
 ロシア極東の人口は年々減少し、600万人強まで減った。それに対して、隣接する中国東北部の人口は1億3000万人に達し、ウラジオストクなどロシア極東へ中国人がどんどん流入している。商業だけでなく、農業分野でも中国の進出が目立ち、ロシア極東経済は中国に飲み込まれつつある。ロシアでは中国脅威論が叫ばれだし、「中国人は人的ネットワークで市場や領土を支配する術を心得ている。極東の幾つかの地域では、中国人の人口が過半数に達している可能性もある。中国人は同化せず、家族を呼んで子供を産む」との警戒感をあらわにしながら、中国人自治区の出現まで考えられ始めている。
 この様なロシアの警戒感は絵空事ではない。近年、中国は万里の長城の総延長を従来の2倍以上に拡大し、高句麗や渤海も中国の一部と言い出して、それらの地域も中国固有の領土としている。更に、教科書には「ロシアとの不平等条約で極東の地が奪われた」との記述も登場した。確かに、ウラジオストクを含む広大な極東地域が1860年の北京条約で清朝からロシア帝国に移管されたのは事実で、尖閣諸島が中国固有の領土とするよりも妥当性がある。ただ、ロシア側からみれば、極東地域を奪い返す準備に入ったと懸念するのも当然だろう。
 GDPが世界2位となり、ロシアと国力が大きく逆転(ロシア1.9兆ドル、中国7.3兆ドル 2011年)し、軍事力も格段に飛躍した中国が力によって奪われた領土を奪い返そうと動き出しているとロシア側が考えるのも無理も無い。中国南沙諸島、尖閣諸島と次々に領土紛争を起こし、領土拡大をしようとしているのだから、尚更だ。
 しかし、一方でロシア中国に戦闘機や潜水艦などの兵器の売却を進めている。中国ロシアから輸入した兵器をコピーして配備した上に、海外に輸出したことに激怒していたにも拘わらずにである。要するに、ロシアは中国の脅威を潜在的に感じていても、差し迫った問題とは捉えていないのだろう。未だ、強大な軍事力を保有していることによる余裕だろうか。
 
 
 日本政府はサンフランシスコ平和条約で放棄した千島列島に北方四島(択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島)は含まれていないとし、今日に至るまでソ連、ロシアによる不法占拠が続いると主張している。一方、ロシアでは第二次世界大戦の結果、旧ソ連が獲得した正当な領土(千島列島、北方四島、南樺太)であると考える人が多数のようだ。
 プーチン大統領の腹の内は分からないが、最大に譲歩しても色丹島と歯舞群島の2島までだろう。その2島の返還だけでも、ロシア国内では批判が巻き起こるに違いない。目先の利益を得られたとしても、領土という恒久的な利益を失うことは大きな損失だからだ。それにロシア人からみれば、自国の領土としているものを1島でも返還することは奪われるという感覚だろう。余程困れば別だろうが、基本的にロシア人にとっては現状のままでかまわないのだ。強力な外交カードを温存することにもなるし。
 仮に日本政府が2島返還で決着を図ろうとしたら、国民は納得するだろうか。日本人からしたら、不可侵条約を破り終戦の後に4島を盗まれたのに小さな2島で済まされ、経済的援助までさせられるのは堪らないだろう。
 では、2島+αではどうだろう。4島返還では埒が明かないため、森元首相が択捉島を除く3島(国後島+色丹島+歯舞群島)返還を言い出したり、麻生元首相が面積による2等分論(択捉島の一部+国後島+色丹島+歯舞群島)を提言したりしたことがあった。帰ってこないより、少しでも返してもらった方が良いとの判断だろうが、根強い批判を浴びた。4島返還要求を下ろし、3島(+α)返還に踏み出すということは、これまで日本政府が主張してきた根拠や論理を放棄することになる。つまり、択捉島、国後島はおろか、色丹島、歯舞群島まで日本の領土とする根拠を失ってしまうのだ。何の根拠も無く「山分けしましょう」では、3島でなくとも1島でもよいということになってしまう。それに、日本は領土拡大のために正当な理由も無くゴネてただけで、4島全てがロシア領と言われても反論できなくなってしまう。3島以上取るつもりが、1島も帰ってこないおそれもあるのだ。
 
 プーチン大統領は北方領土問題について「なかなか難しい問題だ」と言ったが、上記のようなことを考えると、さもありなんと感じる。これまで通りの領土交渉ではなかなか解決しないだろう。経済協力や技術協力を推進しても問題解決にはつながらなかった。
 以前、麻生首相とメドベージェフ大統領は日露首脳会談で北方領土交渉を「独創的で型にはまらないアプローチ」で前進させることに合意したが、具体的にどういうことか分からず(たぶん面積2等分論だろうが)に終わってしまった。しかし、北方領土問題解決には「独創的で型にはまらないアプローチ」の必要性は感じる。
 
 実は昔、「北方領土を早く返還した方がいい」と主張する女性がウラジオストクにいるというニュースを聞いた事がある。ロシア側からの返還論としては、グローバリズム研究センター所長ミハイル・デリャーギン氏が「経済危機を切り抜けるために売りさばけ」とか、ノーベル文学賞作家のアレクサンドル・ソルジェニーツィン氏が「
ソ連崩壊時にウクライナなどに領土を惜しげもなく譲渡する一方で、日ソ中立条約を破ったにもかかわらず、北方領土返還を拒む旧ソ連とロシアの指導者をエセ愛国主義と批判し、国土の狭い日本には領土返還は大問題なのだから四島を一括返還して日本人と友好関係を結ぶべきだ」との主張があった。しかし、この女性の主張はこれらとは異なっていた。この女性の主張は「領土を確定しないと国際法上、南樺太や千島列島全域までもがロシア領ではなくなる恐れがある。だから、ロシアの利益のために北方領土を返還し、早く条約を結んでしまった方がいい。」との趣旨だった。
 改めて地図を見直してみると、南樺太と千島列島はどこの国の色にも塗られていない。日本政府はサンフランシスコ平和条約で南樺太と千島列島を放棄したが、ソ連は調印していないため、ソ連がこの放棄も認めていないと理解し、調印した国の中で領有宣言をする国も無いため、無主地扱いにしているのだ。
 
 これを踏まえ、「独創的で型にはまらないアプローチ」を考えてみる。
 もし、日本がロシアから北方領土を返還してもらう方針を変更し、サンフランシスコ平和条約調印国に南樺太と千島列島の領有宣言をしてもらい、その国から北方四島を譲り受けることにしたらどうなるであろうか。ロシアに喧嘩を売るようなものだから、その様なことを引き受ける国はなかなか現れないだろうが、ギリシャなら可能性を見出せるかもしれない。ギリシャの負債を引き受けるとすれば、首を縦に振るかもしれない。負債は巨額かもしれないが、ロシアから返還してもらうにしても巨額な資金が見込まれるのだから、支払い先が変わるだけだ。
 実際のところ、この様なことをしてもロシアは南樺太や千島列島は無論、北方領土にも居座り続けるだろう。ロシアを北方領土から排除しない限り、日本は島を手にすることは出来ない。しかし、この様な話が出回ることで、ロシア人は疑いも無く自国領と認識している南樺太や千島列島までもが自国領でなくなる危機感を持つだろう。少なくとも厄介なことになると思うはずだ。そうなれば、ウラジオストクの女性のような認識を持つロシア国民が増え、ロシア大統領が譲歩しても抵抗されなくなるため、北方領土返還も夢ではなくなるかも。所詮、絵空事だが。
 
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■イルクーツク声明
 2001年3月にイルクーツクで森総理大臣とプーチン大統領が会談した後に署名した文書。1956年に調印された日ソ共同宣言が平和条約交渉の基本となる法的文書であることを確認し、1993年の東京宣言に基づいて北方四島の帰属問題の解決に向けた交渉を促進することに両首脳が合意した。
日ソ共同宣言
 1956年10月に署名、同年12月に批准。日本と旧ソ連との戦争状態終結、日ソ国交回復を宣言した文書。
 平和条約交渉は宣言後も継続し、ソ連は「日本国の要望にこたえ、かつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島および色丹島を日本国に引き渡すことに同意する」とし、引き渡しの時期は「平和条約が締結された後」と記している。
東京宣言
 1993年10月に東京で細川総理大臣とエリツィン大統領が会談した後に署名した文書。両国間の関係を完全に正常化するために、北方四島の帰属に関する問題を歴史的・法的事実に基づいて解決し、平和条約を早期に締結するため交渉を継続することについて、両首脳が合意した。
 
◆北方領土問題の経緯
■日魯通好条約(1855年)
 択捉島とウルップ島の間に日露両国の国境を確認。
 
■樺太千島交換条約(1875年)
 千島列島を譲り受け、樺太全島を放棄。
 
■ポーツマス条約(1905年)
 日露戦争後、樺太の北緯50度以南の部分を割譲される。
 
日ソ中立条約(1941年4月)
 相互不可侵および、一方が第三国の軍事行動の対象になった場合の他方の中立などを定めた。1946年4月まで有効。期間内の破棄その他条約の失効に関する規定は存在しない。
■大西洋憲章(1941年8月)
 米英両首脳が大西洋憲章に署名し、第二次世界大戦によって領土の拡張は求めない方針を明らかにする、ソ連は同年9月にこの憲章へ参加を表明。
■カイロ宣言(1943年11月)
 大西洋憲章の方針を確認しつつ、「暴力及び貪欲により日本国が略取した」地域等から日本は追い出されなければならないと宣言。
ポツダム宣言(1945年受諾)
 カイロ宣言の条項は履行されなければならない旨、また、日本の主権が本州、北海道、九州及び四国並びに連合国の決定する諸島に限定される旨を規定したポツダム宣言を日本は8月14日に受諾。
※ソ連は1945年4月に日ソ中立条約を延長しない(ソ連側は「破棄」と表現)ことを日本に通達。8月8日、ポツダム宣言への参加を表明し、日本へ宣戦布告。8月28日から9月5日までの間に、北方四島を占領。
■サンフランシスコ平和条約(1951年9月)
 第二次世界大戦後の平和条約(日本と48ヶ国が調印)により、日本は樺太の一部と千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、主権を回復。
※ソ連は講和会議に出席したが調印していないため、同条約上の権利を主張することはできない。
 

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ロシア】ウラジオストクは「中国固有の領土」か――始まった極東奪還闘争
http://www.fsight.jp/11951
Ⅳ-001 世界各国のGDP(上位60) - 国際貿易投資研究所
http://www.iti.or.jp/stat/4-001.pdf
内閣府 返還交渉の経緯
http://www8.cao.go.jp/hoppo/mondai/04.html
外務省 北方領土問題
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/index.html
外務省 北方領土問題の経緯(領土問題の発生まで)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/hoppo_keii.html
外務省 北方領土問題に関するQ&A
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/mondai_qa.html
 

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日本が何度もソ連やhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%25AD%25E3%2582%25B7%25E3%2582%25A2/" class="keyword">ロシアと交渉しても必ず途中で交渉を打ち切っている。

http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E8%2587%25AA%25E6%25B0%2591%25E5%2585%259A/" class="keyword">自民党は必ず新政権発足には北方領土を唱えたが進展した試しがない。

北方領土の進展が無いのはhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%25AD%25E3%2582%25B7%25E3%2582%25A2/" class="keyword">ロシアやソ連が真の原因ではない。

~こめんとするあほぅ♪です | URL | 2013-02-25(Mon)12:07 [編集]


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To ~こめんとするあほぅ♪ですさん
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>日本が何度もソ連やhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%25AD%25E3%2582%25B7%25E3%2582%25A2/" class="keyword">ロシアと交渉しても必ず途中で交渉を打ち切っている。
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>http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E8%2587%25AA%25E6%25B0%2591%25E5%2585%259A/" class="keyword">自民党は必ず新政権発足には北方領土を唱えたが進展した試しがない。
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>北方領土の進展が無いのはhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%25AD%25E3%2582%25B7%25E3%2582%25A2/" class="keyword">ロシアやソ連が真の原因ではない。

では、真の原因とはなんでしょうか?

ボルト | URL | 2013-02-26(Tue)23:37 [編集]


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