六丈記2

備忘録のようなもの

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イタリア中部地震と原発事故

 日本は歴史上、地震によって甚大な被害を受け、今後も大地震が発生するのは確実のため、地震研究に掛ける予算も他国に比べ多く、レベルも世界最先端です。そのため、地震学者も比較的多い方です。防災に必要とされているため、日本に地震学者が多いのは分かるのですが、地震がほとんど発生しない国にも地震学者が存在しているそうです。
 日本で地震の国際会議が開催された時のこと。研究者が皆同じホテルに宿泊していた夜に震度3程度の地震に見舞われたそうです。震度3程度ですから日本人とっては大した事の無い地震ですが、突然の地震に驚き、部屋から血相を変えて飛び出してきた外国人の研究者が何人もいたとか。初めて地震を経験して、恐怖におののいたらしいです。
 海外では地震学者なのに地震を体験したことが無い人も珍しくはない様です。地震を知らずして、何故地震に興味を持ち、地震学者になったのでしょうか。実は地震そのものというより、地震が発する振動を分析することによって地球の内部構造を調べることを目的としている場合もあるとのこと。日本では地震研究というと発生メカニズムや予知と考えがちですが、色々あるものですね。
 
 3年前、イタリアで大きな地震(イタリア中部地震またはラクイラ地震)が発生しました。ヨーロッパには地震が無いイメージでしたが、イタリアではユーラシアプレートとアフリカプレートの衝突の影響でたまに大地震が発生しているようです。
 調べてみると、このイタリア中部地震は地震規模の割りに被害が大きかったようです。
 2009年1月から4月にかけての群発地震で最大地震は4月6日に発生しており、マグニチュード6.3Mw、深さ2km、震度8~9(改正メルカリ震度階級)、死者300人以上、被災による避難生活者6万人以上。震度を気象庁震度階級に変換すると震度5弱~6弱。
 マグニチュードで比較すると東北地方太平洋沖地震の翌日に発生した長野県北部地震(6.3Mw、震度6強)が同じ大きさです。ただし、長野県北部地震の震源が深さ8kmに対し、イタリア中部地震は震源が深さ2kmと浅い。しかし、震度は長野県北部地震よりイタリア中部地震の方がやや弱くなっています。
 揺れの割りに死者が多数発生したのは、石やレンガ造りの建物が多いため、地震によって倒壊した家屋が多かったのでしょう。
 
 10月22日、このイタリア中部地震の予知に失敗したとして、イタリア防災庁付属委員会の地震学の専門家ら7人(行政官2人、学者5人)が過失致死傷罪に問われていた事件の判決がラクイラ地裁でありました。検察の求刑(禁錮4年)より重い、禁錮6年の実刑判決が下され、更に被災者に対して900万ユーロ(約9億4000万円)の損害賠償を支払うことも命じました。実刑の上に損害賠償まで命じられる過酷な判決です。
 この判決に「これから専門家は地震予知に協力できなくなる」などと世界の科学界から懸念の声が噴出しています。日本地震学会の加藤照之会長は「地震は社会とのつながりが深いので、今後、日本の研究者も自由に発言できなくなるのではないかと、非常に心配している」と話しています。
 何故、こんな重い判決が下されたのでしょうか。判決理由が開示されていません(後日開示予定)ので、裁判所の判断の詳細は不明ですが、やはり、刑罰が重くなったのは死者300人以上という結果の重大性のためでしょうか。刑罰の軽重は別にして、過失致死傷罪で有罪になったということは委員会の発表と被災死の間に因果関係があると、裁判所が認めたことにほかなりません。
 
 問題とされたのは2009年3月末にラクイラ県で開かれた会議での報告でした。出席者はベルナルド・デ・ベルナルディニス(防災庁技術部門次長)、マウロ・ドルチェ(防災庁局地震危機センター所長)、フランコ・バルベーリ(大災害委員会副会長)、ジャン・ミケーレ・カルヴィ(ヨーロッパ地震工学研究所所長)、エンツォ・ボスキ(国立物理学火山学研究所所長・地震学者)、ジュリオ・セルヴァッジ(国立地震センター理事)、クラウディオ・エヴァ(ジェノバ大学物理学教授)の7名。ここで委員会は「大地震につながる可能性は低い」と報告。住民に対して、安心して生活するよう呼びかけていました。これをメディアは「安全宣言」と捉えて報道しました。更に地元テレビ局ではベルナルディニス被告の「ワインでも飲んで落ち着くのが大切だ」との発言もされたようです。
 観測網が世界一発達し、地震予知研究では最先端の日本でさえ、未だに予知は出来ません。7人の被告に大地震が起こるとか、起きないとか、判断できる能力は有ったのでしょうか。甚だ疑問です。現在の研究レベルで考えれば、そんな能力は無かったと考えるのが妥当だと思います。彼らは「大地震につながる可能性は低い」と判断した理由を科学的に説明できないでしょう。それなのに何故、委員会は事実上の「安全宣言」を出してしまったのでしょう。何故、「現在の科学レベルでは、大地震が発生するかは分からない」と言わなかったのでしょうか。
 
 実は、年始から始まった群発地震に市民は不安を抱えていました。そんな状況の時にグラン・サッソ国立研究所のジャンパオロ・ジュリアーニ技師が独自の地震予測方法により、近々イタリア国内で地震が発生することを何度か予告していたのです。この予知は信用性に乏しいものでしたが、市民はパニックに陥りました。中には自主避難する者もいたようです。しかし、委員会の事実上の「安全宣言」が出されたことで市民は安心し、家に戻ったり、日常生活を再開させたのです。
 「安全宣言」から1週間後、大地震が発生し、大勢が生き埋めにりました。もし、「安全宣言」がなかったら、避難していた人々は助かったかもしれないのです。遺族が恨むのも無理ありません。
 
 大地震発生の可能性について十分な根拠を持って判断できないにも拘わらず、委員会が態々、事実上の「安全宣言」を出した裏には市民のパニックを沈静化させる狙いがあったようなのです。だから、ベルナルディニス被告のユーモアを用いて地元ワインでも飲んで安心していて良いなんて話が出てきたのです。 科学者が科学的考察に基づいて、失敗をしたなら、刑事責任を問われることは無かったでしょう。しかし、科学者らは科学を装い、政治的要請に応えていたと思われるのです。これでは責任問題に発展したのも無理なからぬことかもしれません。結果的に市民を騙して、被害を拡大させたと思われるのですから。
 
 東北地方太平洋沖地震の津波で発生した原発事故は当初、「想定外の津波」によるものと喧伝されました。こんな大きな津波が襲ってくるなんて思ってもいなかったと。しかし、過去の貞観津波が原発が想定している津波の高さを超えていると報告されていながらも、無視されていたのが事故後広く知れ渡りました。それに、炉心損傷・メルトダウンなどのシビアアクシデントを過小評価していたことも明らかになりました。
 科学的成果を真面目に検討しようとしないで、政治的影響を重視する専門家達。イタリアの学者達と変わりないではありませんか。
 イタリアの学者達は刑事責任を問われましたが、日本の専門家達は問われていません。一概に裁判で責任を問うのは良いとは思いませんが、何らかの形で行った仕事に対して厳しく問うということは必要かもしれませんね。無責任な輩が跋扈するのを防ぐためにも。

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ラクイラ地震
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%A9%E5%9C%B0%E9%9C%87
震度階級
http://quaker.fc2web.com/files/intensity.html
危険な前例 「日本なら5分おきに警告」 大地震予知失敗 伊学者ら禁錮6年
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/600982/
 

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