六丈記2

備忘録のようなもの

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九十九髪茄子 後編

 「九十九髪茄子 前編」の続き。
 
 つくも茄子の伝来をみると、室町時代初期から既に貴重品として扱われていたことがうかがわれます。まだ、陶磁器の製作技術が遅れていた日本では、唐物は優れた製品として持て囃されていたようです。16世紀以降のヨーロッパでは「japan」は漆器、「china」は磁器を意味したとのことですから、つくも茄子が製作された頃には、既に中国製陶磁器は世界最高品質だったのかもしれません。
 
 東山御物になった(1480年前後か?)後、売買されたりして値が付いています。現在の金額にするといくら位になるのでしょうか。時代によって価値基準が異なるため、正確な値を出すことはできませんが、一度、米に換算し、その米の現在価格から現在の金額を試算してみます。
※1石=150kg、1貫文=1000文で換算。
※戦国時代は玄米を食べていましたので、取引記録に出てくる米は玄米と推定しました。
※現在の玄米価格を60kg=15075円(2007年)としました。
※現在の白米価格を10kg=3850円(1995年消費者米価)としました。

購入者 :村田珠光(1502年没)
購入額 :99貫文
購入年 :15世紀末
米換算 :23769kg(玄米)
現在価値:597万円
備  考:1496年の京都で米10石6斗7升が6貫666文で取引された記録あるので、それより換算。1.600石/貫文
 
購入者 :朝倉宗滴(1477年~1555年)
購入額 :500貫文
購入年 :不明。1527年に上洛しているので、その時に京都で購入したと推測。
米換算 :120002kg(玄米)
現在価値:3015万円
備  考:1527年の京都で米24石7斗4升2合9勺が15貫464文で取引された記録あるので、それより換算。1.600石/貫文
 
購入者 :小袖屋
購入額 :1000貫文
購入年 :袋屋に預けたのが天文法華の乱(1536年)の前だから、1530年頃に購入したと推測。
米換算 :314046kg(玄米)
現在価値:7890万円
備  考:越前での適当な取引記録が見当たらないので、1530年の京都で米40石9斗8升6合4勺が19貫517文で取引された記録を利用。2.093石/貫文
 
購入者 :松永久秀
購入額 :1000貫文
購入年 :20年間所持し、1568年に信長へ献上しているので、1548年に購入したと推測。
米換算 :285272kg(玄米)
現在価値:7167万円
備  考:1547年の京都で米42石5斗4升3合7勺が22貫370文で取引された記録あるので、それより換算。1.901石/貫文

 

購入者 :岩崎弥之助
購入額 :400円
購入年 :弥之助は兄・弥太郎に購入代金を借りたともあり、だとすれば社長になる前(1885年以前)だと考えられる。三菱商会は西南戦争(1877年)で大きな利益を上げ、1883年から共同運輸とのダンピング競争に突入するので、購入は資金的に余裕のあるこの間ではないだろうか。なので、1880年と推測。
米換算 :11111kg(白米)
現在価値:427万円
備  考:1880年前後は米価に大きな変動があり、いくらに設定するのが適切なのか難しいが、1升(1.5kg)の米価が1877年に5銭4厘、1887年に5銭なので、1.5kg=5銭4厘とした。
 
 ネットを検索していると、歴史雑学本を数多く執筆している小和田哲男・静岡大学教授が織田信長の時代の貨幣価値について「一貫文が今のいくらになるのかは、なかなか難しい質問です。米の値段が変動しているからです。私は低い時に五万円、高い時に十万円として、だいたいの計算はしています。八万円としても良いのではないかと思います。」と発言しているとの書き込みが多数見られました。そうだとしますと、99貫文は495~990万円(8万円で792万円)、500貫文は2500~5000万円(8万円で4000万円)、1000貫文は5000~10000万円(8万円で8000万円)となります。試算は低めの値寄りですが、妥当なところではなでしょうか。
 戦国時代、名物茶器は一国にも匹敵すると思われていたそうです。つくも茄子も多少なりとも歴史に影響を及ぼしたものです。それなのに、8000万円弱程度のの価値しかなかったとは。結局、食料など日常に消費される物と高級品の価格差が現代ほど大きくなかったのでしょうね。だから、米を基準にするとこの程度の価格になるのでしょう。
 
 次に、1880年(明治時代)の現在価値を消費者物価から試算してみます。
1880年の消費者物価指数(日銀)=0.385
1970年の消費者物価指数(日銀)=577.9
1970年の消費者物価指数総務省)=33.0
2008年の消費者物価指数総務省)=101.7
1880年~1970年は1501.0倍、1970年~2008年は3.08倍。よって、1880年の現在価値は4623倍になります。ですから、1880年の400円は、現在では185万円の価値になります。
 427万円と185万円では2倍以上の差がありますが、自動車1台分位(クラウンカローラ位の差はありますが)の価値だったと考えてよさそうです。安過ぎて、一寸以外です。もっとも、この年の大輔(大臣の次に当たる地位)の月収が同じ400円で、現在の副大臣の年収が約2200万円(月割りにすると183万円)ですから、自動車1台分というのは妥当なところなんでしょうけど。
 ちなみに、明治20年の岩崎弥之助(当時社長)の年収は250,664円でした。つくも茄子626個分相当ですね。
 
 つくも茄子はたぶん安土桃山時代に最も高い価値になり、明治には価値が低下していました。低下したのは時代の価値観の変化だけではなく、大破したことも関係してるかもしれません。それでも、現在、つくも茄子をオークションに出品したら、高値が付くと思います。おそらく、億を下ることはないのではないでしょうか。
 けれども、冷静に考えれば、つくも茄子は小さな陶磁器の容器に過ぎません。つくも茄子に似せて作られた写しの茶入なら、24360円で購入できます。本物と写しを見比べてみると、素人目に見ても本物の方が高価そうに見えますが、機能的には何ら変わりませんし、見栄えも大きく違うわけではありません。
 
 つくも茄子の名が無く、唯の古い茶入なら、高値が付くでしょうか。驚く程の値になることはないでしょう。茶道具に限らないことですが、結局、こういう物は物自体の価値より、由来(背景の物語)の方が大事なのでしょうね。
 
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消 費 者 物 価 等
http://chigasakiws.web.fc2.com/ima-ikura.html
明治人の俸給
http://homepage3.nifty.com/~sirakawa/Coin/J022.htm
1028kaku_kyuyo.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/tyokan/noda/1028kaku_kyuyo.pdf
茶道具・宝雅堂
http://store.shopping.yahoo.co.jp/cyadougu-hougadou/tyaire-tukumonasu.html

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