六丈記2

備忘録のようなもの

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平蜘蛛茶釜 後編

 前エントリ「平蜘蛛茶釜 前編」の続きです。
 
 松永久秀の主君、三好長慶は山城、摂津、河内、大和、和泉、丹波、阿波、淡路、讃岐の9ヵ国を支配した優れた武人でありながら、文化人でもありました。特に連歌を好んでいましたが、茶の湯にも通じていました。
 長慶だけではなく三好氏には文化に勤しむ気風がありました。中でも、弟の三好義賢(実休)は茶の湯に深く傾倒し、武野紹鴎、千利休、今井宗久、津田宗達などの著名な茶人と交流を持ち、高価な「名物」(茶器や茶道具)を50点あまりも所持していたといわれています。
 長慶自身も茶の湯と深い関係がありました。長慶の腹違いの妹のお稲(宝心妙樹)は千利休の妻でしたし、長慶が深く帰依していた禅師の大林宗套(大徳寺90世)は茶人でもあり、武野紹鴎を始めとする名立たる茶人から尊崇されていた人物でした。
 三好氏が茶の湯と深い関係になったのは三好氏に文化を尊重する気風があったためだけではなく、莫大な経済力を持っていた商業自治都市「堺」を運営する「会合衆」とよしみを通じるため、堺で盛んだった茶の湯を取り込んだという面もあると思います。三好氏により茶の湯は政治と関係を持ち、その後、その関係は織田信長に積極的に利用されて「御茶湯御政道」と呼ばれるようになり、豊臣秀吉に受け継がれます。
 
 この様に茶の湯をたしなむ事は政治・経済力に関係し、三好氏が茶の湯に勤しんでいたため、久秀は武野紹鴎に師事して茶の湯を身に付け、一流の茶人の仲間入りをしています。当時は名物を所持していることが一流の茶人として認められる条件でしたので、久秀も数々の名物を所持していましたが、中でも大切にしていたのは「九十九髪茄子」と「古天明平蜘蛛(平蜘蛛茶釜)」でした。「九十九髪茄子」は信長に献上しましたが、「平蜘蛛茶釜」は生涯手放しませんでした。
 広く流布している説では、信長が信貴山城に立て篭る久秀に「平蜘蛛茶釜」を差し出せば助命すると伝えたにも拘らず、久秀は拒絶し、織田軍の総攻撃が始まると「平蜘蛛茶釜」を天守で叩き割って爆死(または茶釜に火薬を詰めて自爆)したとなっています。「信長公記」では「天守に火を放ち焼死」と書かれていますので、本当に爆死したのかは分かりませんが、久秀の死後、「平蜘蛛茶釜」が行方不明になっているのは事実です。
 
 この様に消失したと思われていた「平蜘蛛茶釜」ですが、驚いたことにこの茶釜が静岡県に現存するというのです。
 
 この「平蜘蛛茶釜」を所有しているのは静岡県浜松市西区舘山寺町の「浜名湖舘山寺美術博物館」で、信貴山城跡から出土し、織田信長が愛用したと伝えられているそうです。
 
 この美術博物館は温泉ホテルの「時わすれ開華亭」(館山寺興業株式会社 代表者 金原 貴)の付属施設で、「徳川家の名品を中心に、近世に活躍した東洋の代表される作品・絵画等世界が認める最も美術的な日本美術品が館蔵されております」とのこと。主な館蔵品は、尾形光琳の十二ヶ月図屏風、戸田半右衛門宛織田信長書状、小出吉政宛徳川家康書状、谷文晁の百花百鳥図、渡辺崋山の商山四皓図、武具、茶道具等江戸時代の美術品だそうです。
 

 浜松市西区舘山寺町は堀江城があった場所で、鎌倉時代に丹波国大沢村から藤原基秀が移住して城主となり、大沢氏の祖となりました。以後、明治になるまでの約500年間、大沢氏の領地でした。大沢家は江戸時代に高家旗本になった家格の高い家柄で、大沢基宿は徳川家康の征夷大将軍宣下の式典作法を取り仕切っています。
 

 大沢家はこの様な家柄でしたから、数々の宝物を所蔵していたことでしょう。もしかしたら、オーナーの金原氏は大沢家の子孫で、受け継いできた家宝を元にして美術博物館を開設したのかもしれません。そうだとすると、「平蜘蛛茶釜」も大沢家が秘蔵していたのでしょうか。信長から流出した「平蜘蛛茶釜」が人づてに天下人の家康へ渡り、徳川家から大沢家に下賜されたことも考えられます。
 ただ、千利休の高弟である山上宗二が記した「山上宗二記」には「平蜘蛛 松永の代に失す。宗達平釜、藤波平釜、弐つ。但し此の三つ釜は、当世在りても用いず。」と書かれていて、「平蜘蛛茶釜」は消失したことになっています。それに、この茶釜に執着していた信長が入手していたとすれば、何らかの記録に残っていたはずで、それが無いのは信長が入手していなかった可能性が高いと言わざるを得ません。更に「平蜘蛛茶釜」が後世に伝えられていたとすれば、これ程の逸話を持つ茶釜ですから、存在していた事が記録に残っていなければ不自然です。
 以上のことから、現存する「平蜘蛛茶釜」は松永久秀が所持していた「古天明平蜘蛛」ではないと思われます。
 
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松永久秀
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E6%B0%B8%E4%B9%85%E7%A7%80
松永氏諸家系譜
http://www.kakeiken.com/report007.html
古天明平蜘蛛
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E5%A4%A9%E6%98%8E%E5%B9%B3%E8%9C%98%E8%9B%9B
浜名湖舘山寺美術博物館
http://www.imix.or.jp/kinbara/index.html
浜名湖かんざんじ温泉 時わすれ開華亭
http://www.kaikatei.com/artmuseum/index.html
舘山寺美術博物館公式ブログ 武士のたしなみ・・武道
http://hokuryu.blog116.fc2.com/blog-date-20110609.html
堀江城
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%80%E6%B1%9F%E5%9F%8E
【静岡】信長ゆかりの『平蜘蛛釜』など展示 浜名湖舘山寺美術博物館で茶道具展
http://tabi.chunichi.co.jp/odekake/0302002shizuoka_tyadogu.html
 

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