六丈記2

備忘録のようなもの

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<ショートショート>ステルスマーケティング

 テレビ局の副調整室。壁に取り付けられた複数のモニターの一つには女性キャスターが映っている。
「はい、VTR流して。」
 ディレクターの指示が飛び、少女時代がツイッターで大人気との内容のVTRが流れ始めた。

「VTR終わるよ。スタジオに戻して。」
 再び、ディレクターの指示が飛ぶ。映像がスタジオに切り替わり、女性キャスターが喋り始めた。
「少女時代の人気は凄いですね。韓流は衰え知らずですね。それにしても、若い人の間では『可愛いすぎ』を『かわすぎ』と縮めるのが流行っているのでしょうか。」
 コメントを言い終わるのを見計らって、ディレクターがカメラマンに指示を出す。
 カメラマンはテーブルの下の女性キャスターの脚をズームしながら、靴をアップにした。女性キャスターはそれに合わせて、靴が美しく見えるように脚を揃える。
 映像が女性キャスターの上半身ショットに戻ると、女性キャスターは不自然に左袖を捲り上げながら、原稿を読み始めた。
「次のニュースです。人気ランキングサイト『食べロク』を運営するカカクゴムはやらせ業者によるランキング操作が行われていることを公表しました。カカクゴムは昨年1月にやらせ業者を確認、昨年12月までに39社のやらせ業者を特定し、法的措置も検討しているとのことです。」
 女性キャスターは左腕の腕時計が目立つように顔の近くにもって行き、隣の解説者に話を振った。
「解説委員、カカクゴムは1年前からやらせ業者の存在を知りながら、なぜ今になって公表したのでしょうか。」
やらせ業者の特定に時間がかかったこともあるでしょうが、やらせ業者の暗躍が報道されることを知り、先手を打って公表したのではないでしょうか。『不正業者が存在することを確認しております』と掲載したのも最近ですし、昨年ネット上でランキングの不正操作が話題になった時も表立って具体的な対処に乗り出した様子はないですから。そう考えるのが妥当です。」
やらせ業者は何時ごろから存在するのでしょうか。」
「口コミビジネスと呼ばれるものはネットが発達する前から存在しており、口コミを操作して利益を上げようとする業者もいました。今回、やらせ業者が行った手法はステルスマーケティングと言われています。」
「ステルスマーケティングて、何ですか。」
「ステルスマーケティングとは消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすることです。例えば、報酬を得ていることを秘匿して、ツイッターで特定の商品が良いとつぶやいたり、ブログでに特定の商品に高評価を与えたりすることです。」
「なんだか怖いですね。それでは皆さんおやすみなさい。」
 女性キャスターがお辞儀をして、番組が終了した。

 

「お疲れ様でした。今日も良かったですよ。」
 ディレクターがご機嫌を取るように女性キャスターに駆け寄る。女性キャスターは不機嫌そうに答える。
「下半身を大写しにするのは今回限りにしてちょうだい。」
「申し訳ありません。いきなり靴をアップにすると不自然過ぎるものですから。スポンサーからプロダクト・プレイスメントを強く要望されていたのもご理解下さい。」
「それはいいわ。それより、私の腕時計、ちゃんと映ってた。」
「文字盤が分かる位、映ってました。」
「大袈裟ね。でも良かったわ。ハッキリ映ってないと、これ貰えないのよ。」
 
 女性キャスターが控え室に戻ると、スタイリストが待っていた。
「ねぇ、この衣装センスないと思わない。タイアップとはいえ、酷すぎるわよ。アパレルメーカーにメーカー替えるわよと言っておいて。」
「分かりました。伝えておきます。」
 スタイリストはまた我がままかと思いながらも渋々承知し、機嫌を取るため、話題を変えた。
「ブログ見ましたよ。紹介されていましたケーキを取り寄せて食べてみました。流石、美味しい物をよくご存知ですね。」
「そう、あなた食べたの。そんなに美味しいなら、今度食べてみるわ。」

 

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