六丈記2

備忘録のようなもの

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ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く3

◆第五章 世襲がもたらした「全ギリシャ借金運動」
 ギリシャ人は世襲が好きだ。証左として、パパンドレウ首相の家系は3代続けて首相を輩出している。
 祖父のゲオルギオス・パパンドレウは内戦時代と軍政開始前に首相を務めた。「中道連盟党」を率いたが、中道でも左よりだった。
 父のアンドレアスは10代の頃、共産主義者だったが、アメリカに渡り、経済学者になった。61年に帰国するが、軍政が始まり、再び国外へ。74年に軍政が崩壊すると、帰国して「全ギリシャ社会主義運動」(政党)を設立する。貧困層を取り込んで81年の選挙で勝ち、ギリシャ初の左派政権を樹立する。社会主義の看板を掲げてはいたが、社会主義を推し進めはしなかった。しかし、ギリシャのパトロンだったアメリカとの間に軋轢を生じさせたり、共産圏に接近したりしてみせ、選挙では左派が喜びそうな公約や発言で勝ち続けた。81~90年、93~96年の間、首相を務めている。
 現首相のゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウは04年に父が設立した「全ギリシャ社会主義運動」の党首になり、09年の選挙で中道右派政党の「新民主主義党」を破って首相に就任している。

 

 「全ギリシャ社会主義運動」は西側世界と距離を置き、第三世界に接近することで、ナショナリズムをくすぐり、人気を得た。しかし、それだけでは長続きしない。そこで、支持層である貧困層に公金で職を与え、年金を与えることによって、見返りに票を獲得する方策を採る。それは、それまで一部の者しか受けられなかった社会保障を広く普及させることにもなった。大きな政府を志向したとも言える。
 この大盤振る舞いを支えるには税収では賄いきれず、国債を乱発して、外国から借金するしかなかった。80年にGDPの30%だった政府債務は90年には90%になっている。2010年現在では約120%に達した。
 ギリシャの借金体質は80年代にアンドレアスがもたらしたのである。
 政権交代しても選挙が控えてるため、バラマキを急に止めることも出来ず、借金体質を改める事は出来なかった。
 2000年前後はユーロ導入に向けて、緊縮財政を行わなければならなかったが、オリンピックのために公共投資は減らせないという感覚が蔓延し、無駄遣いも横行した。これを機に汚職もあからさまになった。
 
 公務員の人件費と共に財政を圧迫しているのが「欧州でも最も寛大」と言われる年金だ。ギリシャの年金支給額は現在GDPの10%前半だが、2060年には24%になるとOECDは試算する。
 「ドイツ人は67歳支給なのにギリシャ人は50代で貰っている。支給率も高い。」「美容師が危険労働者になっていて50歳で受給する。」「死者の年金を同居の未婚の娘が相続できる」とドイツなどのメディアは報道し、ギリシャの年金はおかしいと非難する。
 確かに、危険労働者や母子家庭の母親、障害者などは50代で受給資格を得るが、60歳未満で受給するのは全体の4%程だ。また、年金の相続ができるのは娘の一人が親の老後の面倒をみるという風習があるからだ。
 とはいえ、ギリシャの年金制度に問題があるのは確かだ。有権者達が自分に有利になるように陳情を繰り返し、政党は唯々諾々と受け入れてきたため、支給条件はどんどん緩和され、不公正で複雑な制度になっている。
 この様な政治家と有権者の関係を庶民にまで広げ、システム化してしまったのもアンドレアスだった。だが、悪いのは政治家だけではない。税金や社会保障費を払わないず、責任を果たさない国民も多いのだ。

 

 ギリシャは破綻を避けるため、財政再建に取り組んでいるが、これが軌道に乗ったとしても、巨額な借金を返済するのは容易ではない。
 アテネ大の教授は「上手くいっても、政府債務は2014年にGDPの150%になる。それに、短期国債が多い。また、債務を80年代半ばと同じ60%に減らすには順調にいっても30年かかる。でもこうした一番大事なことを政治家は国民に知らせないし、説明も出来ない。だから、大半の国民はどういうことになっているのか分かっていない。」と話す。

 

 政治家と国民の馴れ合いがバラマキ政治を生み、危機をもたらした。パパンドレウ首相の発言からはこの関係を断ち切る決意が察せられる。しかし、馴れ合いが縁故主義に根差す文化ならば、急に無くするのは困難であり、長い時間を必要とするだろう。それはギリシャ人達の言葉からも窺われる。

 


◆第六章 はしっこの国のルーツ、共産党
 共産党の得票率は1割にも満たず、議会では主流になれない。しかし、共産党員と懇意にしていれば、公的機関の組合員は昇給や昇進に便宜が図られる習慣があるため、共産党の主張は別にして、日頃から共産党員と親しくしている労働者は少なくない。共産党員は孤立せず、庶民に深く浸透している。
 
 ギリシャ共産党が西側諸国の共産党よりも存在感が大きいのは、ギリシャ共産党がたどった歴史によるところが大きい。
 第二次世界大戦中、ギリシャは枢軸国に支配された。この時、ギリシャ共産党は国内最大の反ナチス運動を率いた。本来なら、国の英雄のはずだったが、共産化を恐れたイギリスに疎んじられる。共産党の不満は高まり、共産党軍とイギリスに支援される国軍の内戦に発展した。
 混乱に嫌気がさしたイギリスに代わりアメリカが国軍を支援し、共産党軍を国軍が掃討して内戦は終結した。共産党は非合法化され、軍政が倒されるまで、日の目を見ることはなかった。国のために血を流したにも拘わらず、パトロンに追いやられ、一度も好い目遭えなかった。被害者の代表と言っていいだろう。
 この被害者の歴史が非常に被害者意識が強いギリシャの国民性とよく馴染むのだ。
 
 ギリシャはオスマントルコから独立した後、ヨーロッパの「はしっこ」にあったため、列強国に振り回されてきた。ドイツ占領時には連合国への防波堤、冷戦時には共産圏と対峙する最前線、また、西欧世界からは対イスラム圏の盾であった。
 こうしたことが、「はしっこ根性」と呼べそうな被害者意識の強い国民性を醸成した。だから、外から何か言われると理屈もなしに反発し、唐突に過去を持ち出したりする。
 「被害者は常に加害者、敵を探し続ける」ノーベル賞作家、J・M・クッツェーの言葉だ。
 ギリシャは戦中から現在までに限っても、敵をいくらでも探し出せる立場にあり、材料には事欠かない。

 

現在、ギリシャ共産党は庶民から見れば、訳の分からないことを言う理想主義者だ。だが、自分が国の犠牲になった場合、頼れる相手でもある。それに、庶民にはシンパシーを感じる存在にもなっている。
 これが、ギリシャの特色の一つだが、ヨーロッパの中央から見ると胡散臭い国に映る一因でもある。

 


◆第七章 ヨーロッパ人じゃない?
 ギリシャは他の欧州諸国とかなり違う。食文化などは欧州よりアラブやトルコの方に似ている。400年に渡り、オスマントルコの支配下にあったためだ。
 この被支配の歴史はギリシャ社会に大きな影を落としていて、西欧諸国が共有する価値観、近代合理主義的なものを希薄にしている。

 

 独立後、ギリシャはオスマントルコ支配の歴史を無かったこととして、西欧化を目指した。その過程で、他国が抱く「欧州文明の礎」といったギリシャ像を利用して、古代ギリシャを継承する西欧人と見せてきたし、自身もその像に合わせてきた。西欧的ではないのに、そうだと言い張り、自らを騙してきた面が少なからずある。
 こうした幻像を用いて、ECを相手にロビー活動を熱心に繰り広げ、いち早くECに加盟した過去もある。のんびりしている様で、こういう事には巧みで早い。
 それにもかかわらず、西欧諸国から批判されると、「私達はヨーロッパ人じゃない」と開き直る。幼稚な反応だが、見方を変えれば、被害者意識に固まった者のしたたかな方策とも思える。

 

 冷戦時、ギリシャはアメリカから巨額な支援を受けていながら、アメリカを毛嫌いした。アメリカと疎遠になると、今度はECから毎年200億ユーロ規模の援助を貰い、都合が悪くなると反発する。
 パトロン探しに長けていながら、そのパトロンを敵視する。実に厄介な存在というのがギリシャの特色でもある。
 
 ヨーロッパのはしっこで、ギリシャは数々の不幸に見舞われながら紆余曲折の歴史を経てきた。住人達に古代ギリシャの血を受け継ぐものはほとんどおらず、大半は他地域から流入した人々の混成だ。
 様々な歴史を経てきたからこそ、何と言われようと、どんなに困ろうと、動ぜず、頑固に生活スタイルを変えない人々。ギリシャ人にはしたたかで、図太いところがある。

 


◆付記 ギリシャ政府はどう改め、何を国民に強いるのか
 EUIMFが2010年から12年までの3年間で総額1100億ユーロの支援を決め、取りあえずはデフォルトを免れた。
 しかし、この融資には利息が付き、支援が終わると一気に借金返済額が増える。現在の3000億ユーロを超える政府債務に1100億ユーロが加わり、利息分を除いても3年後にはGDP比で160%を超える。このため、いずれ債務不履行に陥る可能性を指摘する専門家も多い。
 
 財政再建関連法では、増税などで歳入を89億5000万ユーロ(3年間)増やし、公務員のリストラや年金のカット、政府のスリム化などで歳出を163億5000万ユーロ(3年間)減らす計画になっている。
 更に、公共機関の民営化や規制緩和もする。労働市場を自由化し、コスト削減で競争力向上させ、輸出増を目論んでいる。輸出で稼いだ金を返済にまわし、一気に負債を減らしたいのだ。
 ギリシャは極端に輸入が多い貿易赤字国で、有望な輸出品は有りそうにない。それに、輸出の9割はユーロ圏だ。
 ギリシャの生産性が格段に向上し、民間企業の勃興と共にギリシャ製品が世界中に輸出されるという狙いは容易くはない。

 

 「30年は辛抱の時代が続く」といわれるこの国で、庶民の暮らしは徐々に劣化するだろう。もう、「人間らしい、ギリシャ人らしい暮らし」は出来ないかもしれない。
 それでも、「我々は追い詰められるとうまく収める知恵がある。これを機に、この国の病、政治を蝕む汚職と縁故主義、脱税をかなり改められると思う。危機は悪いことではない。いい機会だったと言えるときがきっと来る」「人生の中ではよくあること」と収入を減らされた研究所の所長は涼しげに話した。

 

---終わり---
 

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コメント


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No title

 これって毎日新聞の理想の政権ではないですか?

 毎日新聞が今まで社説で述べた下らないセンチメンタリズムとポピュリズム、無意味な被害者意識、これを政策として実現したのがギリシャじゃないですか?

 しかし沖縄もそうですが、一度被害者意識に凝り固まって、それをネタに他者から金を強請る事を覚えた人間は、もうマトモに努力する事なんか考える事ができなくなるのですね。

 でもこの発想が左翼の根源だから、毎日新聞はhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E6%25B0%2591%25E4%25B8%25BB%25E5%2585%259A/" class="keyword">民主党や在日が大好きなんですけどね。

 

 

よもぎねこ♪ | URL | 2011-10-13(Thu)10:39 [編集]


No title

 初めまして。知れば、知るほど、極東の半島国家によく似た歴史、風土だなぁ、と感じてしまうのは私一人ではないでしょうね。

 特に・・

>独立後、ギリシャはオスマントルコ支配の『歴史を無かったこととして』、西欧化を目指した。

とか

>ECを相手にロビー活動を熱心に繰り広げ、いち早くECに加盟した過去もある。のんびりしている様で、こういう事には巧みで早い。

 とか

>西欧諸国から批判されると、「私達はhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%25A8%25E3%2583%25BC%25E3%2583%25AD%25E3%2583%2583%25E3%2583%2591/" class="keyword">ヨーロッパ人じゃない」と開き直る。幼稚な反応だが、見方を変えれば、被害者意識に固まった者のしたたかな方策

 とか・・。
 あまりの既視感(デジャブ)に眩暈すら感じてしまうのですが・・。


 

prijon | URL | 2011-10-13(Thu)18:04 [編集]


No title

To よもぎねこ♪さん
> これって毎日新聞の理想の政権ではないですか?
> 毎日新聞が今まで社説で述べた下らないセンチメンタリズムとポピュリズム、無意味な被害者意識、これを政策として実現したのがギリシャじゃないですか?
> しかし沖縄もそうですが、一度被害者意識に凝り固まって、それをネタに他者から金を強請る事を覚えた人間は、もうマトモに努力する事なんか考える事ができなくなるのですね。
> でもこの発想が左翼の根源だから、毎日新聞はhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E6%25B0%2591%25E4%25B8%25BB%25E5%2585%259A/" class="keyword">民主党や在日が大好きなんですけどね。
>

その毎日新聞の記者がギリシャについて辛辣に書くのですから、面白いものですね。
海外が長く、毎日新聞のhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25AB%25E3%2583%25AB%25E3%2583%2581%25E3%2583%25A3%25E3%2583%25BC/" class="keyword">カルチャーに染まるヒマがなかったからでしょうか。
 
http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E8%2591%2589%25E5%258A%25A0%25E7%2580%25AC%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E/" class="keyword">葉加瀬太郎との対談を読んでみると、なかなか面白そうな人のようです。
http://www.j-wave.co.jp/original/worldaircurrent/lounge/back/051203/index.html

ボルト | URL | 2011-10-13(Thu)23:04 [編集]


No title

To prijonさん
> 初めまして。知れば、知るほど、極東の半島国家によく似た歴史、風土だなぁ、と感じてしまうのは私一人ではないでしょうね。
>
> 特に・・
>
>>独立後、ギリシャはオスマントルコ支配の『歴史を無かったこととして』、西欧化を目指した。
>
>とか
>
>>ECを相手にロビー活動を熱心に繰り広げ、いち早くECに加盟した過去もある。のんびりしている様で、こういう事には巧みで早い。
>
> とか
>
>>西欧諸国から批判されると、「私達はhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%25A8%25E3%2583%25BC%25E3%2583%25AD%25E3%2583%2583%25E3%2583%2591/" class="keyword">ヨーロッパ人じゃない」と開き直る。幼稚な反応だが、見方を変えれば、被害者意識に固まった者のしたたかな方策
>
> とか・・。
> あまりの既視感(デジャブ)に眩暈すら感じてしまうのですが・・。
>

私も本を読みながら、同じように感じてました。
違うのは、ギリシャが史実を持ち出すのに対し、極東の半島人は捏造された歴史を持ち出すことでしょうか。

ボルト | URL | 2011-10-13(Thu)23:09 [編集]


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