六丈記2

備忘録のようなもの

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く1

 ギリシャの債務不履行の可能性がユーロ圏の経済のみならず、世界経済に大きな悪影響を及ぼしています。
 そもそも、ギリシャの財政危機は何故起きたのでしょうか。
 ギリシャ特有の脱税慣習(領収書が必要ない場合は値引きする。つまり、売上を誤魔化すのが常態化)による税収低下、ギリシャオリンピック開催に伴うインフラへの過剰投資による債務増大、一時的な過剰投資が終わったことによる揺り戻しの国内不況、リーマンショック後の世界的不況がギリシャの財政を破綻させたと漠然に思っていましたが、ギリシャ危機後のギリシャを国内取材した『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』という本を読むと本質的な原因ではないようです。
 
 『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』は毎日新聞のローマ特派員が2008年から10年の間にギリシャを度々訪れ、「ギリシャ国内から見たギリシャ危機」を書いたルポルタージュです。ギリシャ人の声を取り上げ、歴史や国民性がこの危機にどう影響したのかを分析しています。
 日本でされているギリシャ危機情報は西側先進国のエコノミスト視点で語られていることが多く、当事者のギリシャ人がどう受け止めているのかをなかなか知ることは出来ません。
 異なる視点からギリシャ危機を知ることが出来るこの本は貴重な一冊と言えます。是非、一読をお勧めします。
 しかし、1年前に出版された本ですから、普通の書店で気軽に手にして内容を確認することは難しいかもしれません。そこで、この本を読んでいただく参考として要約を書くことにしました。省略した部分も多く、自分なりにまとめたものですので、著者の論旨から外れているかもしれません。原作を読んで確認していただけると幸いです。

 

 


ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く
藤原章生 著 毎日新聞社 1000円

 

◆序章 ギリシャ危機の実像
 2009年10月の総選挙で政権交代が起き、中道左派のパパンドレウ政権が誕生した。前政権は国庫を空にして立ち去っていた。前政権が金庫を空にするのはギリシャの政権交代時の習わしになっているが、事はそれだけに収まらなかった。08年と09年の国の借金が低く報告されていたのが判明したのだ。
 01年からギリシャはユーロ圏入りしたが、これまでギリシャはユーロ圏の協定にある財政赤字をGDPの3%以下に抑制するというルールをほとんど守ったことがない。09年の発表も4%だった。しかも、この数字は虚偽で、実際は13.6%に達していた。
 実際の赤字がここまで膨らんだ原因として次の理由が上げられる。
○リーマンショック後に外国からの投資が減り、ギリシャ政府が産業保護のために銀行や企業に融資した。
○選挙があったため、公務員給与や年金を引き下げる等の財出削減をせず、増税もしなかった。
○不況による税収減。
 
 パパンドレウ首相はこの粉飾の事実を公表した。それがどの様な結果をもたらすか考えずに。
 8割以上を国外に頼っているギリシャ国債の信用は下落し、金利は上昇した。
 これにあわてたギリシャ政府は10年に入り緊縮政策や再建計画を打ち出すが、信用は回復せず、市場でギリシャ国債は売れなくなった。
 ユーロ諸国の支援が遅れる中、破綻に追い込まれる寸前の5月6日に国民に厳しい財政再建関連法が成立。それにより、ユーロ諸国とIMFの支援が決定される。とりあえず、破綻は免れたが、財政再建策が進まなければ融資は打ち切られるので、予断を許さない状態だ。
 
 支援が遅れたのは「働かず、借金ばかりするギリシャ人をなぜ我々が救わなければならないのか」というドイツ国民の感情によるものばかりではない。
 パパンドレウ首相が「我々だけの問題ではない。ポルトガル、スペインイタリアだって。」「悪いのは市場。CDSだ。格付け会社も悪い。それを取り締まれ。」といった被害者意識丸出しの発言を繰り返したことや、増税などに怒ったギリシャ国民が焼き討ちを含む激しいデモを行ったことが、ギリシャの信用を毀損した。それも支援遅滞を招いた一因だった。

 

 以上がこれまでのギリシャ危機の流れだ。

 

 上の世代がいい思いをし、下の世代が莫大な借金を背負わされるという点で日本とギリシャは似ている。しかし、様々な点で日本とは大きく異なっており、スペインイタリアとも違う。
 ギリシャ独特の面に目を向け、この様な状態に至った原因などを探る。


◆第一章 アテネ暴動はガキ大将の喧嘩か
 2008年12月6日、アテネのエクサルヒア地区(通称「解放区」。軍事政権時代に反政府活動の拠点となった地区で、普段は警察も立ち入らない)で警察官の警告発砲の弾が16歳の少年に当たり死亡した。その日の内にアテネで抗議デモが起き、暴動、略奪、放火が発生。抗議デモはギリシャ各地に飛び火した。
 
 少年の死は切っ掛けにすぎず、実態はカラマンリス政権に対する抗議デモであり、これを機に日ごろの怒りをぶちまけたいとの思いが伝わる。
 デモ隊の9割方は平和的だが、暴徒に変わる集団(黒覆面団)が混じっている。デモ行進から外れては破壊をし、行進に戻るということを繰り返す。
 デモ隊が警官隊を見つけると投石が始まり、その内、火炎瓶を投げ出す。警官隊は初めは盾で防ぐだけだが、酷くなると群集の隙間を狙って催涙弾を打ち込む。しかし、警官隊と暴徒は直接ぶつかり合うことはない。そして、暴徒がアテネ大学に逃げ込むと警官隊は追わない。そういう決まりになっているのだ。
 警官隊と暴徒の間には報道陣が陣取り、いい写真を狙っている。それをサラリーマンや老人、移民が遠巻きに見物している。
 
 暴動による損害は甚大だったが、その割りに様々な国で起こったデモや暴動と比べると緊張感がない。死活的な動機や圧倒する激しい怒り、自暴自棄さ、傍観者をおののかせる力強さが無いのだ。まるで、漫画の「男一匹ガキ大将」の乱闘場面を見ているようだ。
 暴徒からは何かを変えるという差し迫ったものが感じられず、歴史を動かす力にはならないと感じさせる。アテネの老ジャーナリストも同様の見方のようだ。

 

 黒覆面団はアテネ工科大学を拠点とし、マオイスト、トロツキスト、アナキスト、コミュニスト、極左組織、ネオファシスト、極右など幾つものグループに分かれていて、リーダーはいない。
 2010年5月の5万人が参加したアテネのデモでは、この黒覆面団が銀行に火炎瓶を投げ込み、3人が死亡している。デモによる暴動で死者が出たのはほぼ20年ぶりだった。
 これまで度々、火炎瓶や催涙弾が飛び交うデモが繰り返されたが、死者は出ていなかった。「人は殺さない」。騒乱に熟達しているアテネの人々には、無軌道に見えても一線は越えてはならないという暗黙のルールがあるようだ。
 

 暴動が一見、ガキ大将の喧嘩のように見えたのは若者も警察も喧嘩慣れしていて、距離の取り方や加減に長けている。傍目には派手な暴動だが、当人達は慣れ切っているのだ。

 

---続く---

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

No title

>パパンドレウ首相はこの粉飾の事実を公表した。それがどの様な結果をもたらすか考えずに。

 何と言ったものやら・・・・。

 少なくとも他のhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EU首脳と相談してからどのように対応するか決めるべきでした。

よもぎねこ♪ | URL | 2011-10-10(Mon)20:41 [編集]


No title

To よもぎねこ♪さん
>>パパンドレウ首相はこの粉飾の事実を公表した。それがどの様な結果をもたらすか考えずに。
>
> 何と言ったものやら・・・・。
>
> 少なくとも他のhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EU首脳と相談してからどのように対応するか決めるべきでした。
>

粉飾を公表したのは前政権の悪事を暴き、パパンドレウの評判を上げるという意図があったものと思われます。

この程度で驚いていては・・・。
この先、もっととんでもないギリシャ像が展開されます。

ボルト | URL | 2011-10-10(Mon)21:07 [編集]


No title

お初です
エコノミストの狭い視野で報道がされすぎだと私も思いますね
政治統合と経済統合とグローバル化の鬩ぎ合い
連邦や合衆国へ進むのか、単なる通貨同盟でグローバル化を
乗りきれるとは思えない
物や資本や情報の移動の自由が確保され、今は人の移動の自由が問題となるレベルへグローバル化進んで来ている
結局域内だけでも人の移動の自由を確保出来るかが鍵だと思えます

ana5 | URL | 2011-10-11(Tue)16:05 [編集]


No title

To ana5さん
>お初です
>エコノミストの狭い視野で報道がされすぎだと私も思いますね
>政治統合と経済統合とグローバル化の鬩ぎ合い
>連邦や合衆国へ進むのか、単なる通貨同盟でグローバル化を
>乗りきれるとは思えない
>物や資本や情報の移動の自由が確保され、今は人の移動の自由が問題となるレベルへグローバル化進んで来ている
>結局域内だけでも人の移動の自由を確保出来るかが鍵だと思えます

はじめまして。コメントありがとうございます。
EEC→EC→http://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUと経済統合から政治統合へ向かってましたが、この先、更なる統合に進むのか、後退するのか、不透明ですね。

域内のEU加盟国籍所有者の就労は自由ですが、経済格差や生活格差がますます広がり、民族大移動が起きた場合、この自由を維持できるか疑問です。また、移民の流入問題もあり、域内の移動の自由を保障したhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25B7%25E3%2582%25A7%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25B2%25E3%2583%25B3%25E5%258D%2594%25E5%25AE%259A/" class="keyword">シェンゲン協定を見直す動きが出てきています。

ボルト | URL | 2011-10-11(Tue)21:42 [編集]


No title

ご返事有難うございます
面白い選択肢の提案
ギリシャをhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUユーロ内部に止め破綻させる
国民はギリシャに止まりhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EU管理下で経済債権の負担を背負うか
経済債権ができるまで他国へ移住する

ana5 | URL | 2011-10-11(Tue)22:13 [編集]


No title

グローバル化はそこまで覚悟させるかも
(近年の傾向として
経済が上向いても失業率は下がらず、移民排斥が起きているのは?)

訂正
経済債権ー>経済再建

ana5 | URL | 2011-10-11(Tue)22:40 [編集]


No title

To ana5さん
①ギリシャをhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUユーロ内部に止め破綻させる
②国民はギリシャに止まりhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EU管理下で経済債権の負担を背負う
③経済再建ができるまで他国へ移住する

上記の各選択肢について考えてみました。
①について
PIGSの一角であるギリシャの破綻がhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25A4%25E3%2582%25BF%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25A2/" class="keyword">イタリア、http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259A%25E3%2582%25A4%25E3%2583%25B3/" class="keyword">スペイン、ポルトガルに連鎖するのを恐れたため、http://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUはギリシャ支援に踏み切りました。
それを考えると、http://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUに相当な覚悟がないと破綻させられないと思います。
②について
http://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUはそれを願っているでしょうが、ギリシャ国民には長い苦難の道のりです。
ギリシャ人が真面目にコツコツと返済を続けるでしょうか。反省せずにデモばかりする人達です。
そのうち、「破綻したら困るのはユーロだ」と言い出し、債務の肩代わりを要求するかもしれません。
③について
貿易赤字の一部は移民の送金で埋め合わせているので、http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E3%2583%2595%25E3%2582%25A3%25E3%2583%25AA%25E3%2583%2594%25E3%2583%25B3/" class="keyword">フィリピンのような出稼ぎ国家になるのも有りかもしれませんが、世界的不況では出稼ぎ場所を探すのは困難でしょう。
無理にhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EU域内に移住するとその国の失業率を上げ、http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E7%25A4%25BE%25E4%25BC%259A%25E4%25BF%259D%25E9%259A%259C/" class="keyword">社会保障費を増大させかねません。受入国が耐えられるでしょうか。

ボルト | URL | 2011-10-12(Wed)19:52 [編集]


No title

ご返事有難うございます
ご返事いただいた状況がグローバル化の面白いところでは
http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E5%259F%25BA%25E6%259C%25AC%25E7%259A%2584%25E4%25BA%25BA%25E6%25A8%25A9/" class="keyword">基本的人権に国籍選択の自由を入れて見たらどうでしょう
経済問題・南北・東西問題も独裁も拠り所を失うかも?

ana5 | URL | 2011-10-12(Wed)21:03 [編集]


No title

To ana5さん
>ご返事有難うございます
>ご返事いただいた状況がグローバル化の面白いところでは
>http://www.iza.ne.jp/izaword/word/%25E5%259F%25BA%25E6%259C%25AC%25E7%259A%2584%25E4%25BA%25BA%25E6%25A8%25A9/" class="keyword">基本的人権に国籍選択の自由を入れて見たらどうでしょう
>経済問題・南北・東西問題も独裁も拠り所を失うかも?

全ての国家が国籍選択の自由を認めるということですね。

そんなことになたら、圧倒的人口を有する中国による大帝国が出現するかも。
民主国家に移民を送り込み、乗っ取る事ができるのですから。
生き残るのは独裁国家だけだったりして。

ボルト | URL | 2011-10-12(Wed)21:29 [編集]


No title

その意味でもhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUの試みは面白いのです
私には

長々と連投失礼しました

ana5 | URL | 2011-10-12(Wed)21:40 [編集]


No title

ついで
そんなことになたら、圧倒的人口を有する中国による大帝国が出現するかも。

中国の3000年の歴史は常に同じでした
同化とは圧倒的な人口により初めて加能だと思います

ana5 | URL | 2011-10-12(Wed)21:49 [編集]


No title

To ana5さん
>その意味でもhttp://www.iza.ne.jp/izaword/word/EU/" class="keyword">EUの試みは面白いのです
>私には
>
>長々と連投失礼しました

ありがとうございました。

ボルト | URL | 2011-10-12(Wed)23:33 [編集]


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。