六丈記2

備忘録のようなもの

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TPP推進の動機は何だろうか

TPP交渉参加へ、首相固める シンガポールに伝達方針
 野田佳彦首相は環太平洋連携協定(TPP)交渉に参加する意向を固めた。11月12、13両日にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議APEC)首脳会議の機会に、シンガポールのリー・シェンロン首相と会談し、参加方針を伝達する。TPP交渉開始時からの参加メンバーでけん引役となっているシンガポールの首相に直接伝えることにより、日本が交渉で主導的役割を果たす決意をアピールするのが狙いだ。会談は12日を軸に調整している。
 関係筋が29日、明らかにした。野田首相は首脳会議でオバマ米大統領らとも会談、交渉参加を伝える考えで、日本のTPP交渉参加は国際公約となる。
=47NEWS
http://www.47news.jp/CN/201110/CN2011102901000705.html)より引用=

 

 

 「野田首相がTPPの交渉に参加する意向を固めた」というニュースはテレビでも流れ、首相がついに決断したかのように伝えられていますが、初めからTPPの交渉参加は決まっていたのです。
 読売新聞(10/25朝刊「開国TPP」①」)には「今月4日に各省の局長が集まった席でTPP交渉参加表明を11月と首相が明言」、「首相は『もう決めたんだよ。やるからには11月に向けて努力するのが筋だろう』と側近議員を諭した」と書いています。
 また、産経新聞(10/21付)には「『対米公約』として早急に実現に移す考えを表明する方針を固めた」とあります。^1
 新聞に書いてあるからといって本当とは限りませんが、11月に野田首相が参加発表をするのは間違いないでしょう。だから、今回改めて参加する意向をリークしたのは「もう決まってしまったこと。諦めろ。」と反対派を説き伏せるための地ならしなのだと思います。

 

 産経新聞^1には「対米公約」について、(1)TPP交渉への参加(2)武器輸出三原則の緩和(3)南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣(4)牛海綿状脳症BSE)問題を機に実施された米国産牛肉輸入規制の緩和(5)国際結婚の子の親権に関するハーグ条約加盟の5つだと書かれています。更に、普天間飛行場移設問題が進展しないため、米国がかねてから要求してきた案件をすべてのまざるを得ない状況に追い込まれたのだとも。
 たぶん、その通りなのでしょう。鳩山政権が壊した対米関係を菅前首相がTPPを承諾することで改善しようとした路線を野田首相も踏襲することで、米国の後ろ盾を得、自分の政権強化に繋げたいのでしょう。
 前原政調会長がTPP推進に強硬なのは菅政権の外務大臣としてTPPを推進したということもあるでしょうが、むしろ、TPP失敗で米国に見限られ、個人的な対米影響力を失うことを恐れているのではないでしょうか。
 野田首相にしろ、前原政調会長にしろ、個人的な理由でTPPを推進しようとしていて、国民の利益など考えていないと思われます。TPP参加国の中で日本がEPA若しくはFTAを締結していないのはアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア(交渉中)だけで、今更TPPを締結したところでほとんど利益は無いのですから。個別に結んだ経済連携協定の条件をTPPで放棄するのは愚かな事でしょう。

 

 もう一つ、TPPを強力に推進しているのが経団連です。
 GDPを考えるとTPP参加国における日本の輸出市場はほぼ米国だけです。日米間の関税は十分に低く(特に工業製品)、それに輸出企業は現地生産を進めているため、関税を無くしたところであまり意味は無いでしょう。それなのに経団連はTPPを強く推すのでしょうか。
 TPPは貿易だけではなく、知的財産、投資、環境、労働、金融等など多岐に渡る協定です。米国は「かんぽ」や「ゆうちょ」をターゲットにしているという話もありますが、健康保険も狙っているのではないでしょうか。健康保険を解体して代わりに医療保険を売りつけることが出来れば、莫大な利益が見込めます。リーマンショックで政府管理下での経営再建をしているAIGなどにしてみれば、魅力的に見えるでしょう。
 若し、健康保険が民間の医療保険に取って代わるとしたら、現在、会社が負担している保険料の半分は無くなるのではないでしょうか。民営化するのですから負担する理由がありません。保険料の会社負担が無くなれば、社員数の多い大企業は巨額の金が浮くことになります。
 もしかして、これが経団連の狙いなのかな。

 

 TPP推進派はメリットとして食料が安くなると言います。それによって国内農業が縮小しても仕方がないとも考えているようです。農業が縮小するという事は自給率が尚更低下するという事です。
 マスコミはTPP推進の方針ですが、少し前までマスコミは食料自給率の低さを問題にしていたではありませんか。TPPを締結するとほぼ確実に自給率は低下するのですよ。
 去年、中国にレアアースの輸出を止められ、大騒ぎしたのを忘れてしまったのでしょうか。食料が止まったら、レアアースの比ではありません。

 

////////
^1:5つの対米公約表明へ TPP、武器輸出三原則… 来月の日米首脳会談

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111021/plc11102101370002-n1.htm
 

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世田谷区弦巻ラジウム騒動まとめ

◆騒動の場所
東京都世田谷区弦巻5丁目11-15

 

◆騒動の経過
●10月3日、区民が区道の歩道部分を簡易測定器で測定し「放射線量が高いようだ」と世田谷区に報告。^1
●10月6日、区が圧力洗浄した後、に9カ所を測定したところ、0・08~2・70マイクロシーベルトを検出。(地上5センチ、50センチ、1メートルの3段階で5回測定し、その平均値)^1
●10月13日、専門業者が板塀沿いに2メートル間隔で6地点を測定。高さ1メートルの部分で毎時0.15~3.25マイクロシーベルトを検出。最も高かった場所を再度調べると、地表付近で1.34マイクロシーベルト、高さ1メートルで3.35マイクロシーベルトだった。^2
区道から約1・5メートル離れた民家の壁からは最大毎時18.6マイクロシーベルトの放射線量を検出。^3
住宅の床下から木箱と紙箱で2重に梱包(こんぽう)されたラジウム226入りの瓶を数十本発見。表面は最大で毎時600マイクロシーベルト。鉛容器に密閉すると敷地境界線の放射線量は0.1~0.35マイクロシーベルトに下がる。^4
ガラス瓶の一部には、製造業者とみられる「日本夜光」という記載あり。^5

 

◆騒動以前
●昭和27、28年に建築された建売住宅(木造平屋建て)。^6
●居住者の夫婦(当時、共に34歳)は1953年ごろに引っ越してきた。^7
●夫は10年前(享年82歳)に老衰で亡くなる。証券会社に勤務。^4^8
●92歳の妻は今年2月に転居。現在は介護老人保健施設に入所しているが、健康。箱から約2メートルのところで寝起きしていたことがあるとみられ、概算すると1年間に30ミリシーベルトほど被ばくしていた計算。^4^8
●夫婦には子供が3人(順に長女、長男、次男)いる。現在、50~60代。いずれも結婚するまでこの家で暮らしているが、全員、健康。^8
●妻の寝室(和室で畳の部屋)のベッドの斜め下あたりが床下収納になっていて、そこに瓶が置かれていた。放射線源を探索した時は外壁のベニヤ板をはがした。簡単には開けられないような場所にあった。女性や親族も「あることすら知らない」と話している。^4^6^8
 

 

◆発生放射線と遮蔽
 ラジウム226が安定な鉛206になるまでの過程で、α線、β線、γ線が放出されるので、瓶のラジウムからはこの3種類(β線による制動エックス線はγ線とする)の放射線が発生していた。
 

 α線はガラス瓶で遮蔽される。
 β線はガラス瓶で大半が吸収され、透過しても空気中(数m)で減衰する。エネルギーにより最大飛程は変化するが、実際のところ平均も考慮すると1mも飛んでいないのではないだろうか。
 一方 、γ線は透過力が強いためガラス瓶や家屋を透過し、外部に至る。コンクリートでγ線を遮蔽する場合、ラジウム226が放射線源であるとすると透過率10%にするのに約30cm、1%にするのに約60cm、0.1%にするのに約80cmの厚さが必要となる。^9
 γ線のエネルギー(核種により異なる)が大きくなれば、遮蔽材を厚くする必要がある。

 

 

◆被曝状況
 

 家の間取りやベットの位置、ラジウム瓶の置かれていた位置など分からないので、家屋の写真や記事から想像して図にする。
 

 この様な状況であったのではないだろうか。
 基礎コンクリートでγ線が減衰したため、板塀の地表付近より高さ1メートルの所の方が線量が大きくなったものと思われる。
 

////////////////////////
^1:東日本大震災:空間放射線量、東京・世田谷の道路で2.7マイクロシーベルト
http://mainichi.jp/select/weathernews/archive/news/2011/10/13/20111013ddm041040177000c.h

tml
^2:放射線量:再測定で3マイクロシーベルト超に 世田谷区道
http://mainichi.jp/photo/news/20111013k0000e040027000c.html
^3:発生源?の瓶は4、5本 警視庁も現場に
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111013/crm11101321420025-n1.htm
^4:世田谷の高線量:原発事故と無関係 床下の瓶にラジウムか
http://mainichi.jp/photo/news/20111014k0000m040083000c.html
^5:世田谷の高線量:瓶の中身はラジウム 夜光塗料の原料か
http://mainichi.jp/photo/news/20111015k0000m040120000c.html
^6:建築時から放置? 東京・世田谷のラジウム
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111015/crm11101522430023-n1.htm
^7:ラジウム騒動、深まる謎 大戦時の夜光塗料?
http://www.asahi.com/national/update/1015/TKY201110150155.html
^8:ラジウムの上で50年過ごした世田谷の92才女性 今でも健康体
http://www.news-postseven.com/archives/20111020_66165.html
^9:放射線防護上の遮へい (09-04-10-03)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-10-03

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中国2歳児ひき逃げ放置事件

 中国広東省仏山市で10月13日に悦悦ちゃん(2歳女児)が車にひき逃げされる事件が発生。事件の一部始終を映した防犯ビデオには、血まみれで女児が倒れていたにもかかわらず、18人の人々が素通りした様子が映っていたため、中国人のモラルを嘆く騒ぎになっていた。ネット上に映像がされ、日本でも話題になったので知っている人も多いと思う。

 

 この話には後日談があったようだ。
 女児を救助したのは廃材拾いの陳賢妹さん(58才)。彼女は読み書きができず電話も一人ではかけられないため、周囲に救急車を呼ぶよう頼んだが、誰も応じず、女の子の両親を探して救急車を呼んだそうだ。無視して通り過ぎる人達だけではなく、ここにいた誰もが係わり合いになりたくなかったようだ。
 事件後、政府は感謝状と報奨金2万元を支給しようとしたが、陳さんは「私が稼いだお金ではないから」と辞退したとのこと。
 そんな陳さんを「売名行為だ」「有名になりたかったからやったんだろう」と非難する声が上がっているようなのだ。人として当たり前のことをして、激しい非難に晒されるとは思いもよらなかった。
 温家宝首相が4月に「誠意の欠落、道徳の低下が深刻なところまで来ている」と発言していたが、無視した人達や罵倒する人達を見ていると、共産党指導部が危惧するのも分かるような気がする。社会の不安定要因になる程、モラルハザードが進んでいるのだろう。

 

 ただ、今回の事件は中国人の道徳心のなさだけが原因ではないと思われる。
 2006年に南京市で彭宇事件という事件が起きた。彭宇さんが転んだ老人を助け起こし病院に送り届けたが、その老人は彭宇さんが突き飛ばしたために転んだと主張し、13万元の賠償を求めて告訴。裁判所は「本当に正義の心からの行動なら、老人を助け起こす前にまず犯人を捕まえるはず」と推測し彭宇さんを犯人と認定、7万9000元の支払いを命じた事件だ。
 この事件が特別ではなく、中国では怪我を装った芝居をし、触れたりすると周りから人が集まってきて「お前がやった」と言い立て、加害者に祭り上げて、損害賠償をゆすり取る犯行があるらしく、それを心配する人も多いらしい。
 実際、ウェブサイトで「転んだ人を助けるか」とアンケートを取ったところ、13万人のうち「助ける」と回答したのは4%だった。
 中国のネット上では無視した人達が非難されているが、非難している人が同じ立場になれば、「面倒巻き込まれるのはゴメンだ」と無視するのではないか。

 

 中国には「公の精神がない」と言われ、元々社会に対するモラルが低い社会であったが、この様なことが背景にあり、尚更、善意の価値が低下してしまったのだろう。

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中国で女児ひき逃げ、通行人「素通り」
http://www.youtube.com/watch?v=Hue47jITuJo
ひき逃げされ重体の2歳児を18人が放置 「惻隠の情が根絶」
http://www.epochtimes.jp/jp/2011/10/html/d66373.html
18人が見て見ぬふり中国2才児ひき逃げ事件、救助した女性が「売名行為」だと非難される
http://rocketnews24.com/2011/10/18/142463/
中国首相が講話「誠意の欠落、道徳低下が深刻な状態」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110417/chn11041723370007-n1.htm
転んだ老人は助けるな?!「南京の彭宇事件」で失われた中国のモラル―中国
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=38934&type=1

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監督交代の裏側

 来季監督に日本ハムがスポーツキャスターの栗山英樹氏に、阪神が日本ハムの梨田監督になりそうです。
 9月16日のエントリ「梨田監督の後任に田中幸雄を押してみる」にも書きましたが、このシナリオは以前からスポーツ新聞の記事になっていて、それが現実になる見込みです。
 推測すると、始まりは阪神の成績不振のようです。成績低迷により、6月に真弓監督の交代説が浮上し、監督候補の筆頭として梨田監督が上げられたと記事になっています。これが単なる噂ではなかったのか、8月下旬になると梨田監督が辞意を日本ハム球団に伝えています(監督会見より)。一方、8月27日にはスポーツ新聞が「球団が梨田監督と契約更新しない」と伝えています。球団と梨田監督、どちらが先に言い出したのかは分かりませんが、思惑が一致したのでしょう。梨田監督には地元の関西に帰って、人気球団の阪神の監督になるのは魅力的だったでしょうし、日本ハムも大社オーナーが熱望していた栗山氏を迎える機会ができたのだから。
 公式戦の真っ最中の9月15日に監督辞任発表をしたのも、日本ハム球団が栗山氏と交渉をしやすくするためと、梨田監督が来期、フリーになることを明らかにし、他球団が動きやすくするためだったのでしょう。
 阪神側のシナリオは「真弓監督の任期が切れる来オフを待ってから、梨田監督が就任する。」だったのが、この辞任発表を受けて、急遽、真弓監督の解任の方向に向かったのだと思われます。だから、クライマックスシリーズ進出を持ち出し、解任する理由を作り出したのでしょう。

 

 来季、梨田監督が阪神の監督になったとしても、苦労するのではないでしょうか。阪神ファンは日本ハムファンより厳しいですから。勝てなくても日本ハムだったら、あまり批判は出ませんが、阪神だったら、そうはいかないでしょう。

 

 日本ハムは栗山氏に監督を経験させてから、将来的にGMに就任させる予定のようですが、監督で失敗したら、それもままならないでしょう。
 栗山氏は指導者の経験が無く、長らく現場から離れていますが、スポーツキャスターとして21年間の取材などを通じて築いてきた幅広い知識と人脈があり、ヤンキースのキャッシュマンGMからは取材でチームづくりには現場で何が必要とされるかを学んだそうです。
 どんな仕事もそうですが、傍らから見ているのと実際にやってみるのは違います。実際に仕事をしてみると思ってもいなかった問題が起こるのが普通です。耳学問で乗り越えられるでしょうか。
 監督になる前から批判めいた事を言うのはやめにします。「名選手必ずしも名監督ならず」という言葉もあり、名監督になる可能性もあるのですから。


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日本ハム監督に栗山英樹氏 大社オーナー「球団の方針を理解してくれる人」
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2011/10/17/kiji/K20111017001837330.html
阪神 来季監督に梨田昌孝氏招へい 真弓監督が後を託す人物としては最適
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2011/10/17/kiji/K20111017001837300.html
 

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ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く3

◆第五章 世襲がもたらした「全ギリシャ借金運動」
 ギリシャ人は世襲が好きだ。証左として、パパンドレウ首相の家系は3代続けて首相を輩出している。
 祖父のゲオルギオス・パパンドレウは内戦時代と軍政開始前に首相を務めた。「中道連盟党」を率いたが、中道でも左よりだった。
 父のアンドレアスは10代の頃、共産主義者だったが、アメリカに渡り、経済学者になった。61年に帰国するが、軍政が始まり、再び国外へ。74年に軍政が崩壊すると、帰国して「全ギリシャ社会主義運動」(政党)を設立する。貧困層を取り込んで81年の選挙で勝ち、ギリシャ初の左派政権を樹立する。社会主義の看板を掲げてはいたが、社会主義を推し進めはしなかった。しかし、ギリシャのパトロンだったアメリカとの間に軋轢を生じさせたり、共産圏に接近したりしてみせ、選挙では左派が喜びそうな公約や発言で勝ち続けた。81~90年、93~96年の間、首相を務めている。
 現首相のゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウは04年に父が設立した「全ギリシャ社会主義運動」の党首になり、09年の選挙で中道右派政党の「新民主主義党」を破って首相に就任している。

 

 「全ギリシャ社会主義運動」は西側世界と距離を置き、第三世界に接近することで、ナショナリズムをくすぐり、人気を得た。しかし、それだけでは長続きしない。そこで、支持層である貧困層に公金で職を与え、年金を与えることによって、見返りに票を獲得する方策を採る。それは、それまで一部の者しか受けられなかった社会保障を広く普及させることにもなった。大きな政府を志向したとも言える。
 この大盤振る舞いを支えるには税収では賄いきれず、国債を乱発して、外国から借金するしかなかった。80年にGDPの30%だった政府債務は90年には90%になっている。2010年現在では約120%に達した。
 ギリシャの借金体質は80年代にアンドレアスがもたらしたのである。
 政権交代しても選挙が控えてるため、バラマキを急に止めることも出来ず、借金体質を改める事は出来なかった。
 2000年前後はユーロ導入に向けて、緊縮財政を行わなければならなかったが、オリンピックのために公共投資は減らせないという感覚が蔓延し、無駄遣いも横行した。これを機に汚職もあからさまになった。
 
 公務員の人件費と共に財政を圧迫しているのが「欧州でも最も寛大」と言われる年金だ。ギリシャの年金支給額は現在GDPの10%前半だが、2060年には24%になるとOECDは試算する。
 「ドイツ人は67歳支給なのにギリシャ人は50代で貰っている。支給率も高い。」「美容師が危険労働者になっていて50歳で受給する。」「死者の年金を同居の未婚の娘が相続できる」とドイツなどのメディアは報道し、ギリシャの年金はおかしいと非難する。
 確かに、危険労働者や母子家庭の母親、障害者などは50代で受給資格を得るが、60歳未満で受給するのは全体の4%程だ。また、年金の相続ができるのは娘の一人が親の老後の面倒をみるという風習があるからだ。
 とはいえ、ギリシャの年金制度に問題があるのは確かだ。有権者達が自分に有利になるように陳情を繰り返し、政党は唯々諾々と受け入れてきたため、支給条件はどんどん緩和され、不公正で複雑な制度になっている。
 この様な政治家と有権者の関係を庶民にまで広げ、システム化してしまったのもアンドレアスだった。だが、悪いのは政治家だけではない。税金や社会保障費を払わないず、責任を果たさない国民も多いのだ。

 

 ギリシャは破綻を避けるため、財政再建に取り組んでいるが、これが軌道に乗ったとしても、巨額な借金を返済するのは容易ではない。
 アテネ大の教授は「上手くいっても、政府債務は2014年にGDPの150%になる。それに、短期国債が多い。また、債務を80年代半ばと同じ60%に減らすには順調にいっても30年かかる。でもこうした一番大事なことを政治家は国民に知らせないし、説明も出来ない。だから、大半の国民はどういうことになっているのか分かっていない。」と話す。

 

 政治家と国民の馴れ合いがバラマキ政治を生み、危機をもたらした。パパンドレウ首相の発言からはこの関係を断ち切る決意が察せられる。しかし、馴れ合いが縁故主義に根差す文化ならば、急に無くするのは困難であり、長い時間を必要とするだろう。それはギリシャ人達の言葉からも窺われる。

 


◆第六章 はしっこの国のルーツ、共産党
 共産党の得票率は1割にも満たず、議会では主流になれない。しかし、共産党員と懇意にしていれば、公的機関の組合員は昇給や昇進に便宜が図られる習慣があるため、共産党の主張は別にして、日頃から共産党員と親しくしている労働者は少なくない。共産党員は孤立せず、庶民に深く浸透している。
 
 ギリシャ共産党が西側諸国の共産党よりも存在感が大きいのは、ギリシャ共産党がたどった歴史によるところが大きい。
 第二次世界大戦中、ギリシャは枢軸国に支配された。この時、ギリシャ共産党は国内最大の反ナチス運動を率いた。本来なら、国の英雄のはずだったが、共産化を恐れたイギリスに疎んじられる。共産党の不満は高まり、共産党軍とイギリスに支援される国軍の内戦に発展した。
 混乱に嫌気がさしたイギリスに代わりアメリカが国軍を支援し、共産党軍を国軍が掃討して内戦は終結した。共産党は非合法化され、軍政が倒されるまで、日の目を見ることはなかった。国のために血を流したにも拘わらず、パトロンに追いやられ、一度も好い目遭えなかった。被害者の代表と言っていいだろう。
 この被害者の歴史が非常に被害者意識が強いギリシャの国民性とよく馴染むのだ。
 
 ギリシャはオスマントルコから独立した後、ヨーロッパの「はしっこ」にあったため、列強国に振り回されてきた。ドイツ占領時には連合国への防波堤、冷戦時には共産圏と対峙する最前線、また、西欧世界からは対イスラム圏の盾であった。
 こうしたことが、「はしっこ根性」と呼べそうな被害者意識の強い国民性を醸成した。だから、外から何か言われると理屈もなしに反発し、唐突に過去を持ち出したりする。
 「被害者は常に加害者、敵を探し続ける」ノーベル賞作家、J・M・クッツェーの言葉だ。
 ギリシャは戦中から現在までに限っても、敵をいくらでも探し出せる立場にあり、材料には事欠かない。

 

現在、ギリシャ共産党は庶民から見れば、訳の分からないことを言う理想主義者だ。だが、自分が国の犠牲になった場合、頼れる相手でもある。それに、庶民にはシンパシーを感じる存在にもなっている。
 これが、ギリシャの特色の一つだが、ヨーロッパの中央から見ると胡散臭い国に映る一因でもある。

 


◆第七章 ヨーロッパ人じゃない?
 ギリシャは他の欧州諸国とかなり違う。食文化などは欧州よりアラブやトルコの方に似ている。400年に渡り、オスマントルコの支配下にあったためだ。
 この被支配の歴史はギリシャ社会に大きな影を落としていて、西欧諸国が共有する価値観、近代合理主義的なものを希薄にしている。

 

 独立後、ギリシャはオスマントルコ支配の歴史を無かったこととして、西欧化を目指した。その過程で、他国が抱く「欧州文明の礎」といったギリシャ像を利用して、古代ギリシャを継承する西欧人と見せてきたし、自身もその像に合わせてきた。西欧的ではないのに、そうだと言い張り、自らを騙してきた面が少なからずある。
 こうした幻像を用いて、ECを相手にロビー活動を熱心に繰り広げ、いち早くECに加盟した過去もある。のんびりしている様で、こういう事には巧みで早い。
 それにもかかわらず、西欧諸国から批判されると、「私達はヨーロッパ人じゃない」と開き直る。幼稚な反応だが、見方を変えれば、被害者意識に固まった者のしたたかな方策とも思える。

 

 冷戦時、ギリシャはアメリカから巨額な支援を受けていながら、アメリカを毛嫌いした。アメリカと疎遠になると、今度はECから毎年200億ユーロ規模の援助を貰い、都合が悪くなると反発する。
 パトロン探しに長けていながら、そのパトロンを敵視する。実に厄介な存在というのがギリシャの特色でもある。
 
 ヨーロッパのはしっこで、ギリシャは数々の不幸に見舞われながら紆余曲折の歴史を経てきた。住人達に古代ギリシャの血を受け継ぐものはほとんどおらず、大半は他地域から流入した人々の混成だ。
 様々な歴史を経てきたからこそ、何と言われようと、どんなに困ろうと、動ぜず、頑固に生活スタイルを変えない人々。ギリシャ人にはしたたかで、図太いところがある。

 


◆付記 ギリシャ政府はどう改め、何を国民に強いるのか
 EUIMFが2010年から12年までの3年間で総額1100億ユーロの支援を決め、取りあえずはデフォルトを免れた。
 しかし、この融資には利息が付き、支援が終わると一気に借金返済額が増える。現在の3000億ユーロを超える政府債務に1100億ユーロが加わり、利息分を除いても3年後にはGDP比で160%を超える。このため、いずれ債務不履行に陥る可能性を指摘する専門家も多い。
 
 財政再建関連法では、増税などで歳入を89億5000万ユーロ(3年間)増やし、公務員のリストラや年金のカット、政府のスリム化などで歳出を163億5000万ユーロ(3年間)減らす計画になっている。
 更に、公共機関の民営化や規制緩和もする。労働市場を自由化し、コスト削減で競争力向上させ、輸出増を目論んでいる。輸出で稼いだ金を返済にまわし、一気に負債を減らしたいのだ。
 ギリシャは極端に輸入が多い貿易赤字国で、有望な輸出品は有りそうにない。それに、輸出の9割はユーロ圏だ。
 ギリシャの生産性が格段に向上し、民間企業の勃興と共にギリシャ製品が世界中に輸出されるという狙いは容易くはない。

 

 「30年は辛抱の時代が続く」といわれるこの国で、庶民の暮らしは徐々に劣化するだろう。もう、「人間らしい、ギリシャ人らしい暮らし」は出来ないかもしれない。
 それでも、「我々は追い詰められるとうまく収める知恵がある。これを機に、この国の病、政治を蝕む汚職と縁故主義、脱税をかなり改められると思う。危機は悪いことではない。いい機会だったと言えるときがきっと来る」「人生の中ではよくあること」と収入を減らされた研究所の所長は涼しげに話した。

 

---終わり---
 

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ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く2

◆第二章 「デモは文化」とみなが言う
 ギリシャはデモやストライキが多い。ゼネストは年に数回だが、省庁や民間企業が個別によくストをする。デモが日常化している。
 「デモは解決につながりますか」と問うと、学者や政治家、共産党員に限らず、学生、老人、店員までが「デモはこの国の文化ですから」と答える。「デモは文化」という言葉の底には、デモが日ごろの出来事の延長であり、何かを揺るがすことも無く、慣れているので気にしないという軽視が含まれている。
 デモが日常化するに至った訳を理解するには近過去を知る必要がある。

 

 老若男女を問わずアテネの人々が自国史を振り返る時、真っ先に思い浮かべるのが軍政だ。それも、軍政時代そのものではなく、崩れた瞬間だ。
 1973年、反軍政デモが頻発し、学生達がその先頭に立った。世論は学生支持に回り、当惑した軍当局は占拠されていた大学に軍隊と警官隊を差し向け制圧。死者30人以上、負傷者多数の被害を出し、多数の学生が逮捕された。学生達は圧倒的な武力により潰されたが、軍政の終焉を早めた。
 
 この出来事が人々の忘れ難い共通の思い出として残っているのだ。だから、学生には抗議運動をするのが当たり前で何をしても許されるという雰囲気があり、社会も容認しているところがある。これがデモ多発の根底になっている。

 

 冷戦時代、日本もギリシャも西側世界の最前線にいたが、日本では学生運動が挫折したのに対し、ギリシャでは歴史を動かす存在だった。60年代から70年代をどう過ごしたが根本的に異なる。グローバリズムで何処でも似たような暮らしをしていても、抱える歴史が違うのだ。

 


◆第三章 シュールなドラマ
 財政赤字のデータが大幅に改ざんされていたという事実が公表された時、市場は驚いたが、EUの事情通やギリシャ国民は驚かなかった。ギリシャ社会をよく知る者にとって、ギリシャの統計が信用できないのは暗黙の常識だったからだ。
 EU本部も加盟当初からギリシャの統計データを信用していなかった。あえて、問題視しなかったのは大問題になるのを避けるために黙認していたのだ。

 

 財政に限らず、この国の統計はどれも当てにならない。
 例えば、公務員の人数をギリシャ政府は正確に把握していない。国家統計局の推計では114万人(労働人口の21%、雇用者の3分の1にあたる)だが、実際は調べたことも無く、ギリシャ政府は実数を知らなかった。
 労働省の官僚は語る。
 「新たな政権ができると、閣僚の顧問や局長職は総入れ替えになり、それぞれの閣僚や次官ら政治家たちが、好きなように身内や友人、支援者、または自分で探し出してきた人物をそのポストに招く。こうした人々は『臨時雇用』という形で来るが、この国の問題は彼らがいつの間にか『正規雇用』になっていて、政権が交代しても解雇されないこと。前から同じポストにいた人はどうなるかと言うと、解雇されず、別のポストに行くか、ひどい場合、同じ局長ポストに2人がいるなんてこともある。当然2人分の仕事はないから、前の人達は職場に来なくなり、給料だけもらい続ける幽霊公務員となる。私たち労働省の中でも全体の職員が何人いるのか、どういう構成なのかよくわかっていない。」。
 これでは、政府が実態を把握出来ないのも無理は無い。
 
 ドイツのメディアなどは「勤勉なドイツ人とさほど変わらない給料をもらいながらまったく働かないギリシャ人をなぜ救わなければならないのか」と言う。
 限られた体験からの印象では大半の公務員の給料はEU諸国よりかなり少ない。もしかしたら、公務員給料の総額から計算すると給料が高くみえるが、公務員の実数が公表数よりかなり多いため、一人当たりの給料はさほどでもないのかもしれない。
 事実、正業では食べられず、副業を掛け持ちして長時間労働をする人達が数多くいる。OECDの調査ではギリシャの平均労働時間がEU諸国の中で最も長い。ただし、自己申告を基にしているので信用できるかは疑わしいが。

 

 「疑わしい統計を基にして、ギリシャを見ないで」というギリシャ人の主張はもっともな事かもしれない。

 


◆第四章 「事業仕分け」を我が国に
 アテネのエコノミストはギリシャが破綻寸前に追い込まれた理由を「公務員の増加が一番の理由だが、過去10年、急激に増えたのが大きい」と言う。
 公務員は00年に86万2000人、04年に99万7000人、09年に114万人と増え続け、公務員の人件費は過去6年で2倍に増えている。人数の増加に対し、人件費の増加が大きいのは政治家が得票のために公務員組合の要求をのみ、給料を増額した影響だろう。
 ギリシャには省庁や自治体、警察などの一般的な行政機関の他に、5000の公共機関がある。選挙のたびに省庁や外郭団体を作り、公務員ポストを増やしてきた。だから、10年で1.3倍、27万8000人も増えたのだ。
 増えた公務員がその分仕事をする訳ではない。何もしない場合も多いのだ。元々、必要ないのでそれでも問題は起きない。ポストを作り、公費で給料を払うことが目的だから、仕事内容はどうでもいいのだ。

 

 ギリシャ人も公務員が多すぎるのは認識していて、知識人はリストラの必要性を語る。しかし、リストラを断行するのは容易ではない。失業率が上がり、デモが益々増えて社会不安を増大させかねず、それが悪循環を招き、さらに状況を悪化させる恐れがあるからだ。


---続く---
 

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ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く1

 ギリシャの債務不履行の可能性がユーロ圏の経済のみならず、世界経済に大きな悪影響を及ぼしています。
 そもそも、ギリシャの財政危機は何故起きたのでしょうか。
 ギリシャ特有の脱税慣習(領収書が必要ない場合は値引きする。つまり、売上を誤魔化すのが常態化)による税収低下、ギリシャオリンピック開催に伴うインフラへの過剰投資による債務増大、一時的な過剰投資が終わったことによる揺り戻しの国内不況、リーマンショック後の世界的不況がギリシャの財政を破綻させたと漠然に思っていましたが、ギリシャ危機後のギリシャを国内取材した『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』という本を読むと本質的な原因ではないようです。
 
 『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』は毎日新聞のローマ特派員が2008年から10年の間にギリシャを度々訪れ、「ギリシャ国内から見たギリシャ危機」を書いたルポルタージュです。ギリシャ人の声を取り上げ、歴史や国民性がこの危機にどう影響したのかを分析しています。
 日本でされているギリシャ危機情報は西側先進国のエコノミスト視点で語られていることが多く、当事者のギリシャ人がどう受け止めているのかをなかなか知ることは出来ません。
 異なる視点からギリシャ危機を知ることが出来るこの本は貴重な一冊と言えます。是非、一読をお勧めします。
 しかし、1年前に出版された本ですから、普通の書店で気軽に手にして内容を確認することは難しいかもしれません。そこで、この本を読んでいただく参考として要約を書くことにしました。省略した部分も多く、自分なりにまとめたものですので、著者の論旨から外れているかもしれません。原作を読んで確認していただけると幸いです。

 

 


ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く
藤原章生 著 毎日新聞社 1000円

 

◆序章 ギリシャ危機の実像
 2009年10月の総選挙で政権交代が起き、中道左派のパパンドレウ政権が誕生した。前政権は国庫を空にして立ち去っていた。前政権が金庫を空にするのはギリシャの政権交代時の習わしになっているが、事はそれだけに収まらなかった。08年と09年の国の借金が低く報告されていたのが判明したのだ。
 01年からギリシャはユーロ圏入りしたが、これまでギリシャはユーロ圏の協定にある財政赤字をGDPの3%以下に抑制するというルールをほとんど守ったことがない。09年の発表も4%だった。しかも、この数字は虚偽で、実際は13.6%に達していた。
 実際の赤字がここまで膨らんだ原因として次の理由が上げられる。
○リーマンショック後に外国からの投資が減り、ギリシャ政府が産業保護のために銀行や企業に融資した。
○選挙があったため、公務員給与や年金を引き下げる等の財出削減をせず、増税もしなかった。
○不況による税収減。
 
 パパンドレウ首相はこの粉飾の事実を公表した。それがどの様な結果をもたらすか考えずに。
 8割以上を国外に頼っているギリシャ国債の信用は下落し、金利は上昇した。
 これにあわてたギリシャ政府は10年に入り緊縮政策や再建計画を打ち出すが、信用は回復せず、市場でギリシャ国債は売れなくなった。
 ユーロ諸国の支援が遅れる中、破綻に追い込まれる寸前の5月6日に国民に厳しい財政再建関連法が成立。それにより、ユーロ諸国とIMFの支援が決定される。とりあえず、破綻は免れたが、財政再建策が進まなければ融資は打ち切られるので、予断を許さない状態だ。
 
 支援が遅れたのは「働かず、借金ばかりするギリシャ人をなぜ我々が救わなければならないのか」というドイツ国民の感情によるものばかりではない。
 パパンドレウ首相が「我々だけの問題ではない。ポルトガル、スペインイタリアだって。」「悪いのは市場。CDSだ。格付け会社も悪い。それを取り締まれ。」といった被害者意識丸出しの発言を繰り返したことや、増税などに怒ったギリシャ国民が焼き討ちを含む激しいデモを行ったことが、ギリシャの信用を毀損した。それも支援遅滞を招いた一因だった。

 

 以上がこれまでのギリシャ危機の流れだ。

 

 上の世代がいい思いをし、下の世代が莫大な借金を背負わされるという点で日本とギリシャは似ている。しかし、様々な点で日本とは大きく異なっており、スペインイタリアとも違う。
 ギリシャ独特の面に目を向け、この様な状態に至った原因などを探る。


◆第一章 アテネ暴動はガキ大将の喧嘩か
 2008年12月6日、アテネのエクサルヒア地区(通称「解放区」。軍事政権時代に反政府活動の拠点となった地区で、普段は警察も立ち入らない)で警察官の警告発砲の弾が16歳の少年に当たり死亡した。その日の内にアテネで抗議デモが起き、暴動、略奪、放火が発生。抗議デモはギリシャ各地に飛び火した。
 
 少年の死は切っ掛けにすぎず、実態はカラマンリス政権に対する抗議デモであり、これを機に日ごろの怒りをぶちまけたいとの思いが伝わる。
 デモ隊の9割方は平和的だが、暴徒に変わる集団(黒覆面団)が混じっている。デモ行進から外れては破壊をし、行進に戻るということを繰り返す。
 デモ隊が警官隊を見つけると投石が始まり、その内、火炎瓶を投げ出す。警官隊は初めは盾で防ぐだけだが、酷くなると群集の隙間を狙って催涙弾を打ち込む。しかし、警官隊と暴徒は直接ぶつかり合うことはない。そして、暴徒がアテネ大学に逃げ込むと警官隊は追わない。そういう決まりになっているのだ。
 警官隊と暴徒の間には報道陣が陣取り、いい写真を狙っている。それをサラリーマンや老人、移民が遠巻きに見物している。
 
 暴動による損害は甚大だったが、その割りに様々な国で起こったデモや暴動と比べると緊張感がない。死活的な動機や圧倒する激しい怒り、自暴自棄さ、傍観者をおののかせる力強さが無いのだ。まるで、漫画の「男一匹ガキ大将」の乱闘場面を見ているようだ。
 暴徒からは何かを変えるという差し迫ったものが感じられず、歴史を動かす力にはならないと感じさせる。アテネの老ジャーナリストも同様の見方のようだ。

 

 黒覆面団はアテネ工科大学を拠点とし、マオイスト、トロツキスト、アナキスト、コミュニスト、極左組織、ネオファシスト、極右など幾つものグループに分かれていて、リーダーはいない。
 2010年5月の5万人が参加したアテネのデモでは、この黒覆面団が銀行に火炎瓶を投げ込み、3人が死亡している。デモによる暴動で死者が出たのはほぼ20年ぶりだった。
 これまで度々、火炎瓶や催涙弾が飛び交うデモが繰り返されたが、死者は出ていなかった。「人は殺さない」。騒乱に熟達しているアテネの人々には、無軌道に見えても一線は越えてはならないという暗黙のルールがあるようだ。
 

 暴動が一見、ガキ大将の喧嘩のように見えたのは若者も警察も喧嘩慣れしていて、距離の取り方や加減に長けている。傍目には派手な暴動だが、当人達は慣れ切っているのだ。

 

---続く---

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小沢政治資金事件初公判

小沢被告の意見陳述
 「違法捜査により得られた調書を唯一の証拠としているこの裁判は、直ちに打ち切るべきです」
 「百歩譲って裁判が続けられるとしても、私が罪に問われることはありません。虚偽記載ではなく、まして共謀の事実は断じてございません」
 「国民からなんの付託も受けていない検察という一捜査機関が国家権力を乱用したもので、日本憲政史上の汚点として後世に残されるでしょう」
 「虚偽記載自体、マスコミや特定団体など、第三者から指摘されたものです。収支報告書の誤りは、自主申告して修正することが大前提です。贈収賄の事実もないのに、不適切な供述調書をもとに捜査することは、国民に選ばれた政治家の活動、国民の自由を侵害する恐れがあります」
 「収支報告書の誤りは、修正することで処理されてきました。この事件が立件された後もそのような処理がなされてきました。唯一、私とその団体が犯罪を犯した証拠もないのに強制捜査を受けました。贈収賄など実質的な犯罪は行われていない。現行法の精神を無視し、なぜ捜査を受けなければならないのか。捜査を終結すべきなのに続けたのは常軌を逸している」
 「国家権力が小沢を標的に行ったもの。根拠ないのに、明白な権力の乱用で、民主主義国家における暴力行為です。小沢を表舞台から外す社会的な抹殺で、暗殺より残酷と言えます」
 「何の証拠もないのに、野党第一党代表を狙い撃ちしたもの。衆院選挙は国民が直接、権利を行使し国の代表を選ぶ唯一の行為です。政権交代が行われようというその選挙の前に、権力の乱用を許すなら民主主義国家と呼べません」
 「日本は戦前、権力が結託し、政党政治の抑圧を許しました。それが敗戦の悲劇につながりました。そのような過ちを繰り返すのでしょうか」
 「震災や原発事故の復旧はいまだなされておらず、世界経済も混迷状態にあります。偏狭なナショナリズムやテロが台頭し、日本の将来が暗澹(あんたん)たるものになる。国家権力の乱用をやめ、民主主義を取り戻さなければなりません」
 「まだ間に合うと私は考えます。裁判所には、見識ある判断をお願いし、私の意見を終えます。ありがとうございました」

 

 検察による国家権力の乱用で被告にさせられたと言っているようですが、起訴を決定したのは検察審査会です。むしろ、検察は無罪判決を願っているでしょう。有罪になれば、検察が批判を受けますから。
 それに、検察が小沢不起訴を決定した時、小沢自身が「公正公平な検察当局の捜査の結果として受け止めている」と言っています。「公正公平な捜査」が行われたとの認識を示していたのに、今度は「国家権力の乱用」ですか。
 また、政治資金収支報告書不実記載で捜査が行われたのは小沢だけとも言っていますが、過去の事例では捜査だけではなく起訴され、有罪が確定した事件もあります。日歯連闇献金事件では不実記載で村岡兼造が禁固10ヶ月、執行猶予3年、会計責任者の滝川俊行元事務局長が禁固10ヶ月、執行猶予3年が確定。坂井隆憲のケースでは秘書給与詐取と政治資金規正法違反が認定されて懲役2年8ヶ月が確定。

 

 小沢は盛んに「民主主義」という言葉を使ってますが、「法治主義」と言い直すべきでしょう。どの様な意図で「民主主義」という言葉を多用しているのか分かりませんが、民主主義と法治主義の区別がつかないようでは資質が疑われます。所詮、政局だけの政治屋ということなのでしょう。

 

 国家権力が小沢を抹殺するためにでっち上げた事件との陳腐なストーリーにしがみ付き、威圧的な態度に出ているのを見ていると、本当は器の小さい人なんだろうなと思えてくる。

 

/////////////////
小沢“独演”8分間…「私の抹殺が目的」と敵意むき出し!
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20111006/plt1110061613007-n1.htm
小沢氏、離党や辞職を否定 初公判後会見
http://www.asahi.com/national/update/1006/TKY201110060577.html
坂井隆憲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E4%BA%95%E9%9A%86%E6%86%B2
日歯連闇献金事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%AD%AF%E9%80%A3%E9%97%87%E7%8C%AE%E9%87%91%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 

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イグ・ノーベル平和賞には孔子平和賞が相応しい

 9月29日、ハーバード大学でイグ・ノーベル賞の授賞式が行われ、今年も日本人の受賞者が出ました。受賞したのは化学賞で、聴覚障害者向けにわさびの匂いを利用した火災警報装置を開発したのが受賞理由です。この警報装置は既に実用化されていて、ろう学校で使用されているそうです。
 イグ・ノーベル賞の「『人を笑わせ、考えさせる独創的な研究』に対して与える賞」というコンセプトから考えるとこの警報装置には笑わせる要素も皮肉や風刺も含まれていないため、受賞対象になるのは適当ではないような気がします。
 本来、悪ふざけの賞であったはずなのに、一寸残念です。

 

 最近はイグ・ノーベル賞に対する報道の扱いも変化し、嘲笑するようなことは減ってきています。受賞者も激怒することなく、喜びを持って受け入れる研究者も増えているように見受けられます。
 イグ・ノーベル賞コンセプトが変わったのでしょうか。それで、今年の受賞研究を調べてみたのが下記(受賞名と受賞理由)です。
・生物学賞
「ビール瓶に乗っかるカブトムシ:オスのタマムシはビール瓶をメスと勘違いする」という論文
・医学賞
「忙しい最中ほど無性にトイレに行きたくなる」という人類が昔から直面してきた困難についての研究
・心理学賞
「人間はなぜ日常生活においてため息をつくのか」の研究
・生理学賞
 アカアシガメのあくびの研究から「あくびは伝染しない」と結論付けた研究
・物理学賞
 円盤投げの選手は目が回り、ハンマー投げの選手は目が回らないのはなぜかを究明した研究
・公衆安全賞
 幹線道路を運転中にサンバイザーが下がって視界が何度も狭くなった場合の運転能力についての研究
・化学賞
 寝ている人を起こすことができるわさびの匂い濃度の発見とわさび警報装置の開発
・数学賞
 世界終末に関して「数学的仮定を立てる際には気を付けた方がよいと世界に知らしめた」予測
・平和賞
 違法駐車は違法駐車している高級車を装甲車で踏みつぶすことで解決できることを示した
・文学賞
 常に重要な作業をすることによって、それ以上に重要な作業をせずに済ませることが出来る「Theory of Structured Procrastination(構造化された先延ばしの理論)」の執筆
 
 面白おかしい研究や風刺が並んでいて、コンセプトは変わっていなかったようです。

 


 イグ・ノーベル賞の発表は終わりましたが、パロディ元のノーベル賞の発表はこれからです。10月3日の医学生理学賞を皮切りに7日には平和賞が発表されます。
 今年は「アラブの春」と呼ばれた民主化運動の関係者が有力なようです。

 

 昨年は中国の民主活動家の劉暁波氏が授与し、それに反発した中国が「孔子平和賞」を急遽設立しました。そして、台湾連戦元副総統を受賞者に選び、受賞させようとしましたが、相手にされず、何故か連氏と無関係の女児が代わりに受け取り失笑を買いました。
 その「孔子平和賞」ですが、今年は選考中止になりました。「孔子平和賞」を主催する中国郷土芸術協会文化保護部が中国文化省の許可なく選考状況などについて記者会見を開いたことが重大な規則違反になり、部門自体が認定を取り消されたそうです。
 同賞は今年の受賞候補にプーチン首相、メルケル首相、ズマ大統領、パンチェン・ラマ11世、ビル・ゲイツ氏、宋楚瑜氏、袁隆平氏、アナン氏の8人を選び、発表していましたが、それを問題としたようです。
 表向きの理由は規則違反ですが、プーチン首相など世界的な有名人には受賞拒否されたのではないでしょうか。受賞候補に挙がったプーチン首相側は「どんな賞なのかよく分からないので、時間をかけて調べたいと思う」とコメントし、受賞に消極的です。他の候補も同様だったのでしょう。120万円程度で笑い者になりたくはないでしょうから。
 受賞者にまた拒否され、失笑を買うくらいなら止めてしまった方が良いと中国政府が判断したのだと思います。主催団体を消滅させましたから、二度と開催しないのでしょう。

 
 今年のイグ・ノーベル平和賞はリトアニアのアルテュラス・ズオカス市長が受賞しましたが、中国政府の方が相応しかったのではないでしょうか。受賞理由は「強権的な武力を持って国内平和を実現した上に、ノーベル賞のパロディを創設し、世界中を笑わせた」ということで。

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イグノーベル賞
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E8%B3%9E
11年度イグ・ノーベル賞、日本チームも「わさび警報機」で受賞
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2831632/7851371
ノーベル平和賞は「アラブの春」立役者へ?
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110930-OYT1T01216.htm
孔子平和賞、今年は選考中止 ノーベル平和賞の中国版
http://www.asahi.com/international/update/0930/TKY201109300137.html
中国、孔子平和賞を中止 理由は重大な規則違反
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110928/chn11092820340010-n1.htm
第2回孔子平和賞 プーチン首相らが候補に
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/china/528763/
 

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